
行政書士 中村絵美里 先生
行政書士埼玉法務 代表
千葉県出身。双子の息子の母。立教大学経営学科卒。大学卒業後、自身の相続トラブルを経験し、困り事を気軽に相談できる法律家を目指す。
結婚後、夫の司法書士法人と合同で行政書士開業。平成28年大宮に事務所移転し独立。
全国でも専門事務所がほとんどない「海外口座相続手続」を主要業務とし、少額口座でも解約依頼しやすいシステムを構築。海外業務の特質を生かし、育児を優先した働き方ができる行政書士事務所を運営。
変わった家庭環境から
幼少期から将来は「女性でも自立して稼げる人間になる」と思って過ごしていました。その延長から、やった分だけ評価される営業の仕事を選んで就職活動をしました。大学卒業後は、金融機関やアパレルメーカーの営業職として会社員として働いていました。仕事はやりがいもあったものの、毎日終電で帰るような日々で、周りに結婚して子育てを両立している女性がいない現実に、このままこの仕事をしていて自分の望む未来が来るのか不安に感じるようになりました。
そんな中、25歳のときに父が突然亡くなり争続(相続)の当事者になりました。そのときにはじめて借金があることを知り、3人姉弟の長女で、まだ社会に出て数年の自分が矢表に立たなければならない状況となりました。
それまで、法律を勉強したこともなく、どうすればよいのか、誰に相談していいのかもわからず途方に暮れ、「自分が法律を知っていたら、家族をあんなに不安にさせずに済んだのに。」と自分の無知さを責める月日を過ごしました。そのときに、手続きをしてくれた先生が司法書士さんでした。
きっと自分と同じように、トラブルを解決する術も知らず誰に相談していいかもわからないような困っている人が自分以外にもいるんじゃないか、そんな人を助けられるようになりたいと思い、営業の仕事を続けながら、司法書士の勉強を始めました。
司法書士を目指す
偶然海外の旅行先でツアーが一緒になった方がたまたま司法書士事務所の所長さんで、そのご縁から新宿の司法書士事務所で働かせていただいたり、資格の学校で出会った夫が司法書士事務所を開業することになり、私は司法書士補助者として相続業務や不動産登記・商業登記実務、簡裁代理の業務等を学ばせていただきました。
仕事をしながら司法書士試験と行政書士試験を受験している中、2010年に行政書士試験に合格することができ、翌年に行政書士登録をしました。
とはいえ、司法書士事務所にくる仕事を司法書士補助者としてこなしている状況で、行政書士としての活動はしていないまま数年が過ぎました。
そんな中、行政書士会から2ヶ月にわたる「運送業許可の講習会」の案内が届き、行政書士の業務を知るためにもと思い参加したところ、講師の行政書士の先生方の熱い使命感や深い知識、プロフェッショナルで細やかな作業に衝撃を受けました。行政書士という仕事に誇りを持っている講師の先生のように「私もなりたい!」と思いました。本命の司法書士試験に合格できなかった劣等感から、行政書士の仕事ではなく司法書士の仕事をしたい、という意味のないこだわりに縛られていたのです。その拘りから開放された瞬間でした。
自分で仕事を取れるのか不安な日々
「行政書士として自分で仕事を取れるようになりたい。」そう思い、2016年に夫の司法書士事務所から独立し、大宮で行政書士事務所を開業しました。
双子の子供を授かりちょうど2歳になったところでした。免疫も弱く保育園に預けられない日も多かったため、自宅から徒歩1分のところにあるコワーキングオフィスを借りてパートの事務員さん1名と一緒にスタートを切りました。
電話が全くならない日が続き、電話線がつながってないんじゃないかと事務員さんと電話を掛け合って確認したこともありました。毎月かかる事務所家賃と事務員さんの給料を払わないといけないという現実と、仕事を取らないとという焦りから、気持ちがイライラしてしまう日もありました。
集客するために何をするか、止まっている時間はない。毎月の固定費の支払いはやってくるので、今日できることを日々やっていこうと思い、まずは自分の事務所のホームページを作成しました。小規模事業者持続化補助金で事業計画が採択さればホームページ作成費用の3分の2の部分について補助が支給されるので、審査となる事業計画書を念入りに作成したのですが、5年、10年の事業計画を立てることで事務所で売りにしていきたい業務や毎年やるべき計画を「見える化」できたことで、課題をどうしていけばよいのかも明確になり、事務所スタートの土台にすることが出来たと思います。
思い切りとチャレンジ
その持続化補助金の相談窓口であるさいたま商工会議所のご担当者の方には親身になって事業計画の添削をしてもらいました。
開業したばかりということを知って、若い経営者さんがたくさんいるさいたま商工会議所青年部の存在を教えてもらいました。当然、さいたま市に経営者の知り合いも全くいない状況でしたが、まだ子供も2歳ということもあり迷いもありましたが、思い切って入会しました。
入会してまもなく同団体の敏腕女性経営者の先輩にビジネスコンテストがあるので説明会に出てみないかとご紹介いただきました。
開業したばかりで右も左もわからず、自分のような新参者が参加させてもらっていいのか悪いのかも判断がつかない状況でしたが、悩むよりチャレンジと思い、思い切って応募させていただきました。
エントリーされている方は、私のような独立して間もない者ではなく、実績を積み上げている女性経営者の方も多く、エントリーもお門違いではないかと恥ずかしい気持ちもありました。ですが、推薦してくれた先輩は、私がプランとして提出した「海外口座の解約や相続手続きについて、業務をやっている事務所が全国に数社しかない」と言うと、「いいですね!スパイシーです!」(スパイシー度(個性)を求められるコンテストでした)と言っていただき、その言葉が突き進む自信となりました。
あとは、まだ実績がアピールできるほどないこの業務をコンテストの本審査までに、どれだけ実績を増やして数字でアピールできるようにするか、迷っている時間はありませんでした。
自分のホームページに、案件ひとつ終わったら、実績を乗せて更新を続けました。
珍しい業務であることもあり、「引き受けてくれる事務所がどこにもなくて、ネットで検索してご連絡しました」という問い合わせが着々と増えていき、開業1年後の本審査のときには、実績国を20カ国に増やすことができ、エントリーしたビジネスコンテストで特別賞をいただくことができました。
このチャレンジをさせていただいたことで、開業1年間で急ピッチなスタートダッシュを切ることができました。
育児と仕事、両立の壁
小さいお子さんをお持ちの方は皆さん経験されていると思うのですが、0歳~5歳くらいまでは、すぐに熱を出したりインフルエンザのような流行病をもらってくることがよくあります。我が家も双子ということもあり、一人がインフルエンザになって5日間休んだあとに、
もう一人に感染してさらに5日間休むことになるということもありました。
私は行政書士として自営業だったので、子供が体調悪そうなときは無理して保育園に行かせずに、在宅ワークにして子供を休ませたり融通をつけることがしやすい環境でした。
ですが、同じ保育園に通っている会社勤務のお母さんたちが「子供が熱出したけれど連日は休みが取りづらい」と悩んでいる声をたくさん聞いていました。
ある日、保育園から全保護者に手紙が配布されました。
「熱がある子供に熱冷ましを飲ませ、一時的に平熱にした状態で保育園に託児することはやめてください」といった内容でした。
こんなことしたくてしている母親はいない、休めない事情があってそうせざるを得ない状況なんだと思ったら、胸がとても痛くなりました。
私が20代のときに、会社で営業職をしながら育児できるのだろうか?と不安に思ったときのことを思い出しました。
子供の体調が悪くて会社を休むことに、自分が悪いことをしているわけじゃないのに気まずい思いをしないといけないなんて働きづらいな、
「そうじゃない会社が増えればいいのに」
「誰かがそういう社会を作ってくれればいいのに」という思いが頭をよぎりました。
誰かにどうなってほしいと願ってもいつまで経っても変わらない、という現実も見てきました。誰かにやってほしいじゃなくて、自分に何かできることはないのか、と自問しました。「子供の体調や行事を優先して働ける職場を作ればいいじゃないか」と思いました。
行政書士で女性が起業することのメリット
行政書士の仕事は、代書屋と言われることもありますが書類作成が主な仕事です。パソコン、電話、プリンターがあれば始めることができる仕事です。ご自宅で開業されている先生も多くいらっしゃいますし、初期投資が少ないコストで開業することができます。
もし自宅とは違う場所に事務所を置いた場合でも、VPNで遠隔でつなぐことができるPCを自宅に置いておけば、急にこどもが体調を崩して事務所に出所できなくなっても、自宅のPCから事務所のPCにアクセスしてデータを見ながら在宅ワークで書類作成をすることもできるので、行政書士の仕事は育児しながらやりやすい業種のひとつだと言えるのではないでしょうか。
また子どもの学校行事等が平日の日中にある場合にも、自分が主体で仕事の予定を調整することができるので、会社組織のように作業にかかわる人たちに気を遣わずに済むことにもメリットを感じます。
出産を機に仕事を辞めて育児が落ち着いたら再度元のキャリアで働きたいと思っても、ブランクが空いてしまって現実的にキャリア復帰が難しい問題も女性は抱えています。私は行政書士として起業したことで、経営・営業・経理・総務・広報・事務処理等あらゆる業務に携わることができたことがとても楽しく、いい生涯の職業を得ることができたと日々感じています。
今人生100年と言われており将来の収入が不安という声を多く聞きますが、行政書士の仕事で起業すれば自分が健康であれば、定年もなく生涯現役です。実際に年を重ねた先生方が、経験や知識豊富なベテラン行政書士としてバリバリと元気に活躍している方も多くいらっしゃいます。その姿を見ていると自分の将来も明るく思え、魅力のひとつだと思っています。

行政書士 中村絵美里 先生
- 平成19年~ 都内司法書士事務所で勤務
(不動産登記・相続登記・商業登記業務) - 平成21年~ 司法書士法人春日部市民法務事務所へ入所
(相続全般、裁判書類作成、契約書作成・内容証明等) - 平成22年 行政書士試験合格
- 平成23年 埼玉県行政書士会に行政書士登録
- 平成26年 行政書士春日部市民法務事務所を開業
- 平成28年 事務所を大宮区に移転し、行政書士さいたま市民法務事務所に商号変更
- 令和2年 海外相続案件への取り組みをさらに強化するため、(株)F.I.GLOBAL SOLUTIONを設立。代表取締役に就任
- 令和4年 行政書士埼玉法務に商号変更