行政書士が独立して失敗する10のパターン

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行政書士が独立して失敗する10のパターン

行政書士になってから、いろいろな失敗をしました。しかし当時は、それが失敗だとは気が付いていませんでした。

この記事では、資金面や営業面での失敗はもちろんですが、精神面での失敗も含めて皆さんに紹介します。少しでも、成功へのきっかけになったら嬉しく思います。

資金的に厳しくなる

私が開業したときには、自宅兼事務所でした。当時は実家暮らしだったので、その一室を「借りて」、電話やファックスを設置しました。デスクも既にあったものを使用しましたので、開業費用は殆どかかりませんでした。一方、いわゆる脱サラをした40代の同期の方、はじめから事務所を借りたと言います。ただ、1年くらいして、結局、自宅兼事務所にしたと聞きました。自宅のローンを払いながら、事務所の賃料も払い、さらに生活費も確保するには、いったい月にしていくらの売上が必要でしょうか?

自宅兼事務所で始めるのか、あるいは、家賃を払ってでも、人目に触れる場所で事務所を借りて始めるのか、どちらが良いかは一概には言えませんが、私の場合は、まったくコネもツテもない状態での開業でしたし、貯蓄もなかったため、なるべく初期費用を抑えようと、利用できるものは利用しました。アルバイトで稼いだ資金を、固定費にあてるよりは、営業日にあてたほうが合理的であると思ったからです。ある行政書士の方は、2名でワンフロアを等分していたと言っていました。これも一案でしょう。

行政書士業務を知らない

なんとなく、行政書士になった方は、自分がどのような仕事をすることができるのか分からないまま営業活動を行うことになりがちです。せっかく、法律が、業務のテリトリーを設けているのに、それを知らないのはもったいないことではないでしょうか。

陥りがちなのが「何でもできます」という営業文句。もちろん風呂敷を広げておくのは良いことなのですが、その「何でも」の内容を説明できなければ、相手は「この士業は何ができるんだ?」と思ってそれでおしまいなんてこともあります。気が付かないうちにお客さんを逃してしまう失敗はかなりもったいないです。

また、資格を取得して謎の万能感に支配されていると、やってはいけない他士業の業務まで、手を伸ばしてしまい営業停止処分を食らうという失敗にも気をつけなければなりません。

個人事業主としての意識が低い

ほとんどの人が、個人事業主として、行政書士事務所を開業することになります。私も、行政書士法人の社員となるは、岡嶋行政書士事務所の所長でした。

個人事業主になったら、当然、税務署に開業届を出さなければなりません。また、確定申告も自分で行うことになりますが、その申告方法も、白色と青色とがあり、当時は「最大65万円の控除が受けられる」ということで、「青色申告承認申請書」を提出したのを覚えています。個人事業主向けの本を買って損はないでしょう。

そこに記載されていることを実践して「ああ、自分は、事務所の経営者なんだ」という意識が出てくると思います。この「経営している感」がないと、誰かが責任を取ってくれるような錯覚から、いつまでも抜け出せません。なぜ、独立したのか、それは、あなたが自由を選んだから。そして、自由には責任が伴います。

実務の勉強ばかりしている

開業して、何かの縁で仕事の話が舞い込んでくると、まず「失敗することの恐怖」にぶつかるかもしれません。誰だってそうです。

セミナーをたくさん受けることは非常に大切です。しかし、慎重になりすぎて、まだ「知識」が完ぺきではないからといって、相談を遠回しに断わっているとしたら、それは、もったいない。成長の機会を逃しているのと同じです。

私自身、はじめての仕事は、大変に緊張しました。しかし、お客様から相談を受けている以上、その期待に応えたい。緊張しつつも、受任し、分からないことがあったら、「分かりません」ではなく「確認します」や「お調べします」と言って一旦時間を得て、役所に聞くなり、先輩の先生に聞くなりしました。絶対に失敗できないポイントさえ抑えれば、リカバリーできる小さな失敗は、成功の元となります。

実務力が低い

実務力とは、実務をこなせばもちろん経験として蓄積していく能力です。しかしながら、手引きのまま行っているだけで、「法律家」であることを忘れてしまっているとき成長は頭打ちになってしまうのかもしれません。

また、申請を行って、行政庁より補正指令があった際に、その場しのぎで対応していると、応用ができなくなります。つまり、その補正の背景には、法律の要請があるということを意識し、常に法律に還る姿勢を徹底すれば、失敗を未然に防ぐことができますし、マンネリ化を避けることもできるかもしれません。

ビジネスマナーに欠ける(サービス業としての意識が低い)

ビジネスマナーは最低限必要なものです。行政書士をはじめとする士業は、あくまでもサービス業であり、商品を納品する業ではありません。そのため、その行政書士の個性というものが前面に出てきます。

同じ許可を取得できるとして、懇切丁寧な行政書士と、無愛想な行政書士だったら、どちらが選ばれるでしょうか。同じ結果を求めるなら、少しでも安いのが鉄則かもしれませんが、多少高くとも、サービス業者としての自覚を持って対応する前者のような行政書士の方が選ばれる可能性は高いでしょう。

孤立してしまう

個人事業主となり、これから一人で頑張っていくと決意新たにしても、デスクに座り、電話が鳴るの待っているだけでは仕事は来ません。人と人との関係のなかにしか仕事の話は転がっていないのです。

自分の行政書士事務所のホームページを作れば、数件は連絡が来るかもしれません。しかし、受け身体制で事務所にこもっていると、時間とお金だけが減っていき、さらに悪いことに、精神的エネルギーさえも失われていきます。

たしかに、今のコロナ渦では、外出し、営業に勤しむのは難しいかもしれません、しかし、オンライン上でも、人と人との交流は沢山あります。地元の商工会議所とか、事業者が集まっていそうな団体に加入してみたり、あるいは、SNSを利用して、特定の知人にメッセージを送ってみたり、何かしらアクションを起こして、それにリアクションが生まれるような場所を見つけてみてください。

時間に追われ、不健康になってしまう

今の私が、一番失敗しているなと思うのが、時間に追われてしまい、休養せずに突っ走り、具合を悪くしてしまうということです。

個人事業なので、いくらでも仕事をすることができてしまい、土日も休日返上してしまうこともあります。長い緊張状態は、健康を害します。身体はそのようにできているのです。一部、性格によるのかもしれませんが、しっかりとプライベートのメリハリをつけないと、取り返しのつかない「失敗」をすることになってしまいます。

完璧主義に陥る

完璧にしてから、申請をしたいと思いませんか?私も最初は、そう思っていました。しかし、変なプライドは捨てた方が、お客様のためになることもあります。完璧でなくても、提出して窓口の指導を仰ぐことで、途中で補正を行うことができます。

これを、最後まで作り終えてから提出して、結局だめで、補正するにも莫大な時間がかかることが判明したという失敗を経験したことがあります。最初のミスが後々、雪だるま式に大きなミスへと変貌していってしまうのです。

お客様へのコンタクトが少ない

実は、お客様へのコンタクトが少ないことが、時間に追われている感の原因となっていると最近分かってきました。そして、なぜコンタクトが少ないかというと「完璧主義」に陥っているため、すべてが調ってからお客様へコンタクトしようと思っているためなのかもしれません。

お客様から「いつになりそうですか」と聞かれる前に、こちらから進捗報告するだけで、ずいぶんと気分は楽になりますよ。

まとめ

独立開業して行政書士になると、いろいろな失敗を直に体験することになると思います。ただ、そのことは決して悪いことではなく、この失敗を次に生かすための知識にすることができるかどうかが分かれ道です。

この記事を読んで、耳が痛いと感じる現役行政書士の方もいらっしゃるかもしれません。とくに「時間に追われている感」を解消するために、完璧主義をなくし、お客様へのコンタクトをまめにするのは、ある程度、軌道に乗ってきた行政書士の方には、とても大切な事だと思います。ぜひ、今一度、振り返ってみていただければ幸いです。

岡嶋俊哉

行政書士の岡嶋俊哉です。私は国際文化に興味があり、外国人との交流を積極的に行っています。そのような縁から現在では在留資格(ビザ)申請や翻訳文書作成等の仕事をしています。前職では、国際特許事務所に勤務し、主に商標登録手続(英文書類作成含む。)に携わりました。また、某ラジオ局に勤務し、ゲストのアテンド等を経験。さいたま商工会議所青年部に所属し、各種イベントの運営委員等にも携わっています。

中央大学法学部卒業、埼玉県立浦和高等学校卒業、埼玉県行政書士会所属

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