行政書士が入管業務(国際業務)を始めるまでにやるべきこと

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行政書士が入管業務(国際業務)を始めるまでにやるべきこと

この記事では、行政書士として入管業務(国際業務)を取り扱うまでの流れについて説明します。

入管業務とは

入管業務とは、外国人の在留資格(外国人が日本に滞在するために必要な資格)の手続をする業務です。

例えば、「日本で働きた。」「国際結婚をし、日本で結婚生活を送りたい。」「日本で起業したい。」「日本に永住したい。」などの依頼があります。

一番取得されている在留資格は「短期滞在」と呼ばれる在留資格です。主な活動内容は、日本観光やビジネスなどとなります。しかし、観光については旅行会社が、ビジネスについては呼び寄せる会社が手続きを行うのが一般的であり、行政書士が関わることは少ないです。

そのため、実務的には、主に仕事・国際結婚・永住などの在留資格の手続を受けることになります。

入管業務を行う資格

行政書士資格

入管業務を法的に業務として取り扱うことができる資格者は、行政書士と弁護士です。行政書士になるには、行政書士試験に合格するか、一部の国家資格者(弁護士、税理士、弁理士など)や公務員経験者(高卒17年以上など)が登録可能です。弁護士は、国家資格でも最難関と言われる司法試験に合格し、司法修習を修了する必要があります。

もし、これから国家資格を目指すのであれば、行政書士試験に合格し、行政書士登録することが、一番早く入管業務を取り扱うことができるといえます。

行政書士試験合格後に、行政書士登録をします。例年、行政書士試験合格発表は1月下旬となります。すぐに登録申請をした場合、通常であれば、その年の4月に行政書士登録がされます。

申請取次

行政書士になると、入管業務の申請書類の作成を行うことができます。

行政書士は、行政書士法で他人の依頼を受け報酬を得て官公署に提出する書類の作成を行うことができます。もし、行政書士資格や弁護士資格の無いものが、報酬を得る目的等で在留資格申請書類を作成すると、行政書士法や弁護士法に抵触する可能性があります。

しかし、行政書士登録のみでは、申請書類の作成はできますが、申請書類を入管へ提出することはできません(一部の届出書類は除く。)。これは、在留資格の申請は、本人の出頭が原則だからです。この外国人本人出頭を免除されるのが、申請取次という制度です。

行政書士は、本人出頭が免除される、申請取次を行える国家資格者であり、入管業務を行うためには、取得しておく必要があります。

申請取次を行うためには、行政書士会が主催する申請取次研修を受講し、研修を修了する必要があります。

詳細はこちらの記事をご覧ください。
「在留資格」手続を扱う「届出済証明書(ピンクカード)」取得までの道のり

実務の勉強

実務を行うには最低限の知識が必要となります。最低限の知識がなければ相談対応も難しく、受任も難しいでしょう。

前述した、申請取次研修会でも基本的な知識を学びますが、膨大な量のレジュメで実務のイメージがしづらいと思います。

実務の学び方としては、入管業務の全体概要や基本用語を学び、その他と行政書士がよく関わる在留資格を学ぶといいでしょう。その後は、実務をこなしながら専門書で勉強していくというのがおすすめです。行政書士実務家であり学者ではないので、学説に深入りしすぎないようにしましょう。必要な知識を早く習得し、一日でも早く実務を行うことが大切です。実務をこなせば、お金も入りますし、必要な知識もおのずと知ることができます。

学ぶ方法は、①行政書士が執筆している実務書で学ぶ。②行政書士会主催の研修会を受講する。③実務セミナーを受講するなどが考えられます。

①行政書士が執筆している実務書は、行政書士の視点で書かれているので、わかりやすいと思います。ただし、書籍ということもあり、内容が薄いことがあります。価格的には2千円〜3千円程度のため、手が出しやすいと思います。少し興味があるなという場合は、書籍で見てみるというのもいいでしょう。

②行政書士会主催の研修会では、最新の実務情報を入手することができます。ただし、都道府県行政書士会によっては、研修会の内容や回数に差があります。都心部の行政書士会では研修が充実していますが、地方になると研修会の開催が少ないことがあります。なお、日本行政書士会連合会では、オンライン研修を受講できますが、収録された研修ということもあり、講師の体験したリアルな裏話というのが聞けないと考えていいでしょう。

③実務セミナーの受講では、講師の経験に基づいた話を聞くことができ、すぐに実務で使える知識やノウハウを学ぶことができます。ただし、受講費用が高いのが通常です。知識を学ぶのはもちろんですが、ノウハウを買うという視点で受講したほうがいいでしょう。

しかし、まだ実務経験がなかったり、経験が浅いうちは、そもそも何から学んでよいかの判断が難しいので、学び方の例を紹介します。

全体概要を学ぶ

実はここが最も大切で、ここをおろそかにすると実務でも失敗するリスクが上がります。入管業務の基本であり、ここをしっかり習得することができれば、相談や申請方針の決定にも役立てることができます。

入管法令の全体概要、在留資格の種類、基本的な要件、業務の流れ、相談対応などが必要です。行政書士会の申請取次研修では、入管法令の全体概要、在留資格の種類、基本的な要件などは学べると思います。

しかし、業務の流れ、相談対応などはノウハウの部分となるので、学ぶことは難しいです。建設業許可申請などの他の許認可業務を取り扱ったことのある行政書士であれば、応用がききますが、業務未経験者はこのあたりで悩みます。

入管業務の全体概要を学ぶ実務講座

外国人在留手続の実務入門編の表紙行政書士のすすめ 外国人在留手続の実務 入門編

 相談や依頼のある在留資格

入管業務の全体概要を学んだ後は、よく相談・依頼のある在留資格を学ぶといいでしょう。

おすすめの学び方としては、留学生、外国人労働者、外国人を雇用予定の会社などから相談のある「技術・人文知識・国際業務」から学ぶと、業務のイメージがつかめます。

「技術・人文知識・国際業務」に関連する在留資格として「高度専門職」も学ぶといいでしょう。「高度専門職」は、「技術・人文知識・国際業務」で点数が高い人が取得できる在留資格です。高度専門職の要件をクリアするかを判断してあげ、提案することができるようになります。

「技術・人文知識・国際業務」を学ぶ実務講座
外国人在留手続の実務 技術・人文知識・国際業務の表紙行政書士のすすめ 外国人在留手続の実務 技術・人文知識・国際業務

次に、「技術・人文知識・国際業務」の外国人配偶者や子供が取得する「家族滞在」を学ぶといいでしょう。家族一緒の申請を受任することができます。「家族滞在」は、更新申請であれば、そこまで難しくないので、ご本人で申請する人が多いです。しかし、日本に呼び寄せる手続きや、他の在留資格からの変更の場合は、書類集めが難しいので、覚えておくといいでしょう。

「家族滞在」を学ぶ実務講座

外国人在留手続の実務 家族滞在の表紙行政書士のすすめ 外国人在留手続の実務 家族滞在

その後は、「永住者」を学びます。永住者になれば、ほとんど日本人と同じように日本で滞在することができるため、多くの外国人は「永住者」を目指しています。永住者は、原則10年の滞在や所得要件など、様々な要件があり、何年も前から準備をしておく必要があります。あと2年待たないと、許可は難しいとならないために、行政書士は、相談された際に、永住者になるための提案をしてあげると、喜ばれます。早い段階で、永住者の要件と手続の流れは把握しておくべきです。

「永住者」を学ぶ実務講座行政書士のすすめ 外国人在留手続の実務 永住者

まずは、ここまでの知識で、最低限の対応はできます。そのあとは、都度調べながら対応していくことになります。法令の見方、手続の確認方法をどこにアクセスすればよいかを把握しておくと良いでしょう。

「日本人の配偶者等」を学ぶと、国際結婚の案件に対応することができます。外国人の配偶者と日本で一緒に暮らしたいという日本人からの依頼が通常です。この場合、どちらかが日本語を話せますし、個人からの依頼となります。企業案件が苦手な方は、こういった在留資格を取り扱ってもいいと思います。企業案件の在留資格は、企業等で申請書類を対応したり、取り組みやすさから、競合が多く、相場が下がってきている印象を受けます。しかし、「日本人の配偶者等」は、ご本人たちの結婚に至るまでの経緯などをまとめる力などが必要となります。事実整理や文書作成力が必要な業務であり、難易度が上がる分、就労系の在留資格よりは安定した報酬が見込めます。ただし、国籍毎に、収集書類の難易度があり、どのように収集すればいいのかを提案できるように情報をまとめておく必要があります。

「日本人の配偶者等」を学ぶ実務講座

行政書士のすすめ 外国人在留手続の実務 日本人の配偶者等

以上を学ぶと、基本対応をすることが可能となります。もし、相談者に聞かれてわからないことがあっても、「調べて回答いたします。」や「特殊な案件なのですぐには判断できません。調査した後に正式に回答いたします。」などを回答することがきます。

それと、法令集で要件を確認し、わかりやすい言葉で回答するということも大切です。行政書士同士などであれば、専門用語で回答することもいいと思いますが、一般の方への回答は、わかりやすい言葉で答えます。

ましてや、外国人の方には、小学生に回答するくらいの説明が求められます。

相談の多い在留資格

  • 技術・人文知識・国際業務(エンジニア、貿易、通訳翻訳など)
  • 技能(外国人料理人など)
  • 経営・管理(外国人起業家など)
  • 家族滞在(外国人の家族)
  • 日本人の配偶者等(日本人の配偶者や子)
  • 永住者
  • 特定技能(近年増加傾向)

また、各在留資格には、関連して知っておきたい在留資格もあります。

「技術・人文知識・国際業務」の関連在留資格:「高度専門職」、「企業内転勤」

「特定技能」の関連在留資格:「技能実習」

 他にも、「特定活動」という、在留資格も相談が多いですが、「特定活動」は、簡単に言えば、在留資格のその他というところです。そのため、特定活動の中でもたくさんの種類があり、よく相談されたり関わるものは覚えておく必要があります。

会社設立手続の知識や経験があるのであれば、「経営・管理」の在留資格もおすすめです。「経営・管理」も相談の多い在留資格です。事業内容によっては、許認可手続にもつながる在留資格となります。

「経営・管理」が学べる実務講座

行政書士のすすめ外国人在留手続の実務 経営・管理の表紙行政書士のすすめ 外国人在留手続の実務 経営・管理

そして、2019年に創設され、近年注目を集める「特定技能」もおすすめです。新しい在留資格ですが、一つ一つの書類の作成難易度は高くありません。一度流れをつかんでしまえば、稼げる業務となります。

「特定技能」が学べる実務講座

行政書士のすすめ 外国人在留手続の実務 特定技能の表紙行政書士のすすめ 外国人在留手続の実務 特定技能

書式準備

実務を始めるのに、最低限、初期対応のヒアリングシートと料金表は用意しておいたほうがいいです。入管業務以外の実務をこなしている行政書士であれば、他の業務で使用している書式をアレンジして準備できるかもしれません。完璧には難しいでしょうが、そこは経験でカバーできると思います。行政書士事務所で働いた経験のある方なら、その事務所の書式を参考にできます。しかし、業務経験がない方や経験が浅いうちは、書式の準備に悩むと思います。経験無しの新人行政書士は、研修会や実務セミナーなどで入手した書式を少しずつストックしていくようにしましょう。

営業

実務知識をつけ、初期対応書式を準備したら、営業を行います。営業方法としては、ホームページ制作、SNS、新聞・インターネット広告、DM、紹介、セミナー集客などがあります。

お問い合わせは、外国人本人、外国人の知り合いや関係者、外国人を雇う会社、士業の紹介などからきます。

外国人本人からの依頼は、外国語が話せるといいでしょう。もし、外国語が話せない場合は、企業や日本語を話せる外国人が顧客見込みとなります。近年は、ホームページでの集客も飽和状態となっており、価格も下がってきているのが実情です。そのため、個人事務所で細々とやるのであれば、企業からの依頼や士業からの紹介に力を入れるといいでしょう。

ただし、営業は、自身の事務所所在地の地域特性も関係するので、実行と検証を繰り返して自分にあった最適な営業方法を見つけましょう。

営業のポイントは、自身が入管業務を取り扱っていることを知ってもらう。名刺・ホームページ・SNSなどへの取扱業務記載は、必要といえます。

また、他士業の先生とつながり、外国人関係の相談があった場合に、自分の事を思い出してもらうようにしておくといいでしょう。

営業と聞くと飛び込み、インターネットや新聞などの広告、DMなどを思い描きますが、お金も労力もかかるので、まずは、前述のようなことから始めるといいと思います。

東京や大阪などの都市部で案件が多い場合は別ですが、実務知識や経験が乏しい段階では、広告やDMなどに費用や労力をかけすぎないようにしましょう。

受任までの流れを準備

業務を受任し、着手するまでの流れは作っておくといいでしょう。電話での問い合わせ時に確認すること。相談でのヒアリング事項。業務の流れの説明。見積方法。受任時の契約書の準備(契約書がない場合、見積書に条件を記載する)など

受任した後は、調べる時間を確保できるので、最初は受任するまでの書式や説明をできるようにしておきます。

情報収集

最新の入管情報を入手することも大切です。時限立法的なものもありますので、入管のホームページから情報を入手しましょう。

また、入管業務を取り扱う行政書士とつながり、情報を交換し合うというのも有意義です。同業であれば、同じような視点で情報を集めていますので、実務に直結します。何か特殊な申請案件があった際も、守秘義務に注意しながら、仲間の先生に相談するのもいいと思います。お礼は、申請の結果を教えることで十分です。お互い情報を入手できますので、それだけで価値があります。

行政書士カレッジ 編集部

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