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中国・台湾の漢字を日本の漢字に変換する「正字」のルール

中国・台湾の漢字を日本の漢字に変換する「正字」のルール

2025.03.10

漢字文化圏の概要

東アジアの国々では、歴史的に漢字が共通の文字体系として使用されてきましたが、各国の事情により異なる発展を遂げています。現在の漢字の使用状況は以下の通りです。

  • 中国:1949年以降、識字率向上のために簡体字を導入。現在も公文書などでは簡体字が正式な表記。
  • 台湾:繁体字を使用し、教育や公文書も繁体字で統一されている。
  • 日本:漢字と仮名(ひらがな・カタカナ)を併用し、常用漢字・人名用漢字の制限がある。
  • 韓国:過去に漢字を使用していたが、現在はハングルが中心。ただし、一部の公文書や氏名では漢字が併用される。
  • ベトナム:かつて漢字を使用していたが、現在はアルファベット字表記(クオック・グー)に完全移行。

このように、漢字文化圏といっても各国で使用する文字は異なり、日本での正式な表記に変換する際には注意が必要です。

在留カードの氏名表記ルール

日本に在留する外国人には、原則としてアルファベット表記の氏名が在留カードに記載されます。しかし、特定の条件を満たす場合に限り、漢字表記が認められます。

  • 原則:パスポートに記載されたアルファベット表記(ピンインなど)をそのまま使用。
  • 例外:日本生まれの中国人の子どもや、過去の外国人登録制度の影響で漢字表記が認められているケース。

このように、漢字表記が可能な場合でも、使用できる漢字には一定のルールがあり、誰でも自由に決められるわけではありません。

漢字氏名の表記の重要性

在留カードに漢字表記を希望する理由はさまざまですが、特に以下の点が挙げられます。

  1. 印鑑登録が必要:漢字表記がないと印鑑登録ができず、ビジネスに支障をきたすことがある。
  2. ビジネス上の利便性:契約書や公的書類で漢字氏名が求められる場合がある。
  3. 文化的な要素:自分の名前を正しく表記したいという希望。

特に中国出身者は漢字での表記を重視することが多く、行政手続きの際には慎重な対応が必要です。

在留カードに記載できる漢字のルール

中国の簡体字や台湾の繁体字をそのまま使用することはできず、日本の「正字」に変換する必要があります。このルールの根拠は、「在留カード等に係る漢字氏名の表記等に関する告示(平成23年12月26日法務省告示第582号)」に基づいています。しかし、以下のような問題が生じることがあります。

在留カード等に係る漢字氏名の表記等に関する告示(平成23年12月26日法務省告示第582号)

1つの簡体字に対して複数の「正字」が存在する

  • 例:「陈」→「陳」
  • 例:「刘」→「劉」または「劉」

過去の外国人登録証の影響で、異なる漢字が認められることがある

  • 例:「马」→「馬」だが、旧登録証の影響で「碼」が使われた例もある。

一度登録された漢字表記は、氏名変更がない限り修正が困難

  • 役所の対応によっては、誤って登録された漢字の変更が難しいことがある。

具体的な事例と問題点

外国人の氏名表記には多くの注意点があります。特に以下のようなケースでは混乱が生じる可能性があります。

陳(CHEN)

  • 簡体字「陈」は正字「陳」に変換されるが、他の簡体字と統一されない場合がある。
  • 例:「陈小明」→「陳小明」

劉(LIU)

  • 第1順位と第2順位の正字が異なるため、どの漢字を採用するかで影響を受ける。
  • 例:「刘伟」→「劉偉」または「劉偉」

王(WANG)

  • 中国・台湾では「王」が共通だが、日本の人名用漢字としての制約はない。
  • ただし、「汪(WANG)」など類似の漢字があるため、間違えないように注意が必要。

実務上の注意点

在留カードの漢字表記を希望する場合、以下のポイントに注意するとスムーズに手続きを進めることができます。

  1. 変換後の表記に違和感がないか確認する
    日本の常用漢字・人名用漢字に準拠した表記になるか。
  2. パスポートの表記を必ず確認する
    パスポートと異なる漢字を登録すると、後の手続きで問題になる可能性がある。
  3. 台湾出身者は特に注意が必要
    政権によってピンインの表記が変わるため、どの表記を使うか明確にする。
  4. 自治体による解釈の違いを確認
    申請する自治体によっては、漢字表記の可否について異なる判断が下される場合がある。
  5. 専門家への相談を検討
    在留資格や漢字表記に関する専門的な知識を持つ行政書士や法律専門家に相談することで、手続きを円滑に進めることができる。

まとめ

中国や台湾出身の外国人が日本で在留資格を取得する際、漢字の表記には細かなルールがあります。簡体字や繁体字をそのまま使用することはできず、日本の正字に変換する必要があります。しかし、変換ルールには例外が多く、過去の登録制度の影響を受けることもあります。そのため、在留カードの漢字表記を希望する場合は、慎重に確認し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。

このような漢字表記の問題は、外国人にとっては重要な手続きの一環であり、日本での生活やビジネスに直結します。適切な知識を持ち、正しい手続きを踏むことが、日本での円滑な在留につながるでしょう。

鈴木 篤

特定行政書士。合同会社法テック代表社員の鈴木です。実務のスペシャリストの行政書士を育てることが日本社会の発展に貢献するとの思いから行政書士カレッジを運営しています。