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外国人が日本に投資する際に必要な手続(外為法に基づく対内直接投資管理制度)

外国人が日本に投資する際に必要な手続(外為法に基づく対内直接投資管理制度)

2023.08.29

安全保障と経済を横断する領域で様々な課題が顕在化する中、政府全体として、経済安全保障の取組を強化していくことが必要となっています。外国為替及び外国貿易法(外為法)では、健全な投資を一層促進しつつ、国の安全等に係る技術などが流出することなどを防ぐため、外国投資家が一定の事業を営む日本の企業に対して一定の投資を行う場合に事前届出を求め、国の安全等の観点から審査を行っています。

制度の概要

外為法に基づき、①外国投資家(非居住者である個人、外国の会社、これらの者から50%以上出資を受けている本邦の会社等)が、②国の安全等の観点から指定される事前届出の必要な業種を営む企業に対して、③投資等を行う場合、外国投資家は財務大臣及び事業所管大臣あてに事前届出を行う必要があります。

ただし、一定の条件を満たす外国投資家について、役員に就任しない、非公開の技術関連情報にアクセスしないなどの一定の基準を遵守する場合には、事前届出免除制度の利用が可能となる場合があります。なお、その場合は事後報告書を提出する必要があります。

事前届出が必要な場合の例

  • ①外国に在住する個人投資家が、②輸出規制の対象となる先端材料や防衛装備品の部品を製造する日本の非上場会社に対して、③1株(端株も含む)以上の株式取得を行う場合
  • ①外国法人が、②ソフトウェアを開発する日本の企業に対して、③外国法人の関係者を役員として就任させることについて株主総会において同意する場合

 

①事前届出の必要な投資家

  • 非居住者である個人
  • 外国法令に基づき設立された法人やその他団体
  • 非居住者である個人又は外国法人により議決権の過半数以上を保有されている本邦の会社
  • 非居住者である個人又は外国法人である者が50%以上出資する組合、又は業務執行組合員の過半数を占める組合
    など

②事前届出の必要な業種

  • 武器・航空機(無人航空機を含む)・宇宙開発・原子力関連の製造業、及び、これらの業種に係る修理業、ソフトウェア業
  • 軍事転用可能な汎用品の製造業
  • 感染症に対する医薬品に係る製造業、高度管理医療機器に係る製造業
  • 重要鉱物資源に係る金属鉱業・製錬業等、特定離島港湾施設等の整備を行う建設業
  • 肥料(塩化カリウム等)輸入業
  • 永久磁石製造業・素材製造業
  • 工作機械・産業用ロボット製造業等半導体製造装置等の製造業
  • 蓄電池製造業・素材製造業
  • 船舶の部品(エンジン等)製造業
  • 金属3Dプリンター製造業・金属粉末の製造業
  • サイバーセキュリティ関連業種(情報処理関連の機器・部品・ソフトウェア製造業種、情報サービス関連業種)
  • インフラ関連業種(電力業、ガス業、通信業、上水道、鉄道業、石油業、熱供給業、放送業、旅客運送)
  • 警備業、農林水産業、皮革製品製造業、航空運輸業、海運業
    など

③事前届出の必要な投資等

  • 上場会社の1%以上の株式取得、非上場会社の1株※以上の株式取得 ※端株の取得も含む
  • 外国投資家又はその関係者の取締役・監査役の就任への同意
  • 事前届出の必要な業種に属する事業の譲渡や廃止の提案・同意
    など

事前届出の手続き・審査

外国投資家は、原則として、投資等を行おうとする日の前6か月以内に、定められた様式により、日本銀行を経由して財務大臣及び事業所管大臣宛てに事前届出を行う必要があります(オンライン提出可)。

財務大臣及び事業所管大臣は、国の安全等の観点から事前届出を審査し、国の安全等を損なうおそれがあると認められる場合には、投資の変更・中止の勧告・命令が可能となっています。
事前届出がなされなかった場合や虚偽の届出があった場合は、株式売却等の措置命令が可能となっています。

よくあるご質問

Q株式取得以外に、どのような場合に事前届出が必要ですか?

A以下の場合などに事前届出を行うことが必要です。
• 外国投資家自ら又はその関係者が役員に就任することについて、株主総会において同意する場合
• 事前届出の必要な業種に属する事業を外国投資家が承継する場合

Q事前に届出を行った投資等は、いつから行うことができますか?

A財務大臣及び事業所管大臣において、事前届出が国の安全等に支障がないかどうかを審査するため、事前届出を受理してから起算して30日を経過するまで(4か月まで延長可)は、届け出た投資等を行うことはできません(投資禁止期間)。ただし、その期間は、国の安全等を損なう事態が生ずる投資等に該当しない場合、短縮されることがあります。

Q非上場会社の株式取得をする場合に、事前届出の免除制度は利用できますか?

A①一般投資家等(注)が、②コア業種(事前届出の必要な業種のうち国の安全等を損なうおそれが大きい業種)以外の事前届出の必要な業種を営む非上場会社に対して、③株式取得を行う場合、役員に就任しない、非公開の技術関連情報にアクセスしないなどの一定の基準を遵守することにより、事前届出の免除制度を利用することが可能となることがあります。なお、その場合は、事後報告書を提出する必要があります。
(注)外為法違反で処分を受けた者または外国政府等やその被支配企業等以外の投資家等。

本記事は財務省ホームページを基に記載いたしました。

鈴木 篤

特定行政書士。合同会社法テック代表社員の鈴木です。実務のスペシャリストの行政書士を育てることが日本社会の発展に貢献するとの思いから行政書士カレッジを運営しています。