外国人材受入共生のための総合的対応策改訂-行政書士入管実務への影響

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外国人材受入共生のための総合的対応策改訂-行政書士入管実務への影響

2020年7月14日、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策が改訂されました。行政書士の実務上で注目すべき点は以下となります。

  1. 在留資格手続のオンライン申請の更なる対象の拡大
  2. 在留カードとマイナンバーカードの一体化の検討
  3. 「特定技能」の在留資格に係る在留諸申請時の提出書類の簡素化
  4. 在留資格認定証明書の電磁的記録による交付の実施の検討

在留資格手続のオンライン申請の対象拡大は、これまでの実務対応が大きく変わる事項です。今までは、地域に縛られて営業をしていたことが、オンラインにより対応地域が全国に広がります。オンライン相談、テレワーク等の環境を整備した行政書士事務所が、シェアを拡大することができるチャンスと言えます。

在留カードとマイナンバーカードの一体化では、マイナンバーカードの取り扱いに注意が必要です。マイナンバーカードには健康保険の情報も搭載される予定なので、申請書類の簡素化が望めます。

特定技能は手続きの煩雑さも相まって、在留資格の許可数が伸び悩んでいます。さらに、新型コロナウイルスの影響から、世界的に人の移動に制限がかかっていることも、在留資格取得の障壁となっています。提出書類が簡素化されることで、これまで敬遠してきた企業が、特定技能外国人を受け入れることができる可能性があります。行政書士としては、受入れ容易になっても、法令上規定された、受入体制を継続できるようコンサルティングしていく必要がある。

在留資格認定証明書は、外国にいる外国人を日本に呼び寄せるために必要な書類である。現状は、在留資格認定証明書を日本に取得したあと、外国にいる本人に在留資格認定証明書を国際郵送しなければならない。国際郵送は、時間、手間、費用がかかる。電磁的記録による交付が実現すれば、これらの国際郵送の面倒がなくなり、より迅速な受入が可能となるであろう。

以下、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和2年度改訂)の概要」を引用

令和2年7月14日
外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議

我が国に在留する外国人は令和元年末293万人、外国人労働者は令和元年10月末166万人と、過去最高。加えて、平成31年4月から特定技能外国人の受入れを開始。令和元年12月に「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を改訂し、関連施策を着実に実施。

→現下の新型コロナウイルス感染症への対応を適切に行いつつ、引き続き、外国人材を円滑かつ適正に受入れ、受入れ環境を更に充実させる観点から、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和2年度改訂)」を策定(191施策)。今後も政府一丸となって、関連施策を着実に実施するとともに、総合的対応策の充実を図る。

1 外国人との共生社会の実現に向けた意見聴取・啓発活動等

(1) 国民及び外国人の声を聴く仕組みづくり

「『国民の声』を聴く会」等において、幅広い関係者から意見を継続的に聴取(共生施策に係る意見を多言語で受け付ける「御意見箱」の設置、地方公共団体との継続的な意見交換)、得られた意見について共生施策の企画・立案に適切に反映

(2) 啓発活動等の実施

全ての人が互いの人権を大切にし支え合う共生社会の実現のため、各種人権啓発活動を実施

2 外国人材の円滑かつ適正な受入れの促進に向けた取組

(1) 特定技能外国人のマッチング支援策等

  • 就労を希望する外国人材と企業とのマッチング支援(新型コロナウイルス感染症の影響により解雇等され、実習が継続困難となった技能実習生等に対する雇用維持支援措置の着実な実施、各分野特有の就労状況等を踏まえたマッチング支援の方法の検討・実施)
  • 地方創生推進交付金による地方公共団体の自主的・主体的で先導的な取組の積極的な支援(優良事例の収集・横展開等)

(2) 特定技能試験の円滑な実施、特定技能制度の周知・利用の円滑化等

  • 技能試験の受験機会の拡大等(国内外における試験実施の拡大等)
  • 特定技能の受入れ分野の追加の検討、各分野における特定技能2号に該当する業務の内容や技能試験の実施等の検討の推進
  • 国内外における特定技能制度に関する周知・広報の実施
  • 介護現場におけるコミュニケーション能力の測定に重点を置いた新たな日本語テストの実施
  • ODAにより実施している開発途上国での技能人材・ビジネス人材の育成等の支援

(3) 悪質な仲介事業者等の排除

ODAによる技術協力を通じた開発途上国の関係機関との連携強化

(4) 海外における日本語教育基盤の充実等

  • 国際交流基金を通じた日本語教育基盤の強化や、我が国の文化及び社会の魅力発信等の取組の推進
  • 国際協力機構(JICA)による「日系四世の更なる受入制度」の活用促進に向けた日本語能力習得促進のためのカリキュラムやテストの作成等の実施

3 生活者としての外国人に対する支援

(1) 暮らしやすい地域社会づくり

行政・生活情報の多言語・やさしい日本語化、相談体制の整備

  • 地方公共団体からの要望を踏まえた外国人受入環境整備交付金の対象範囲の見直し
  • 「外国人在留支援センター」における地方公共団体の行政窓口に対する通訳支援の実施及び外国人の採用・定着に向けた企業等向けのセミナー等の実施
  • やさしい日本語の活用に関するガイドラインの策定、地方公共団体などの職員を対象とした研修や広報等の実施
  • 地方公共団体向けの多言語翻訳システムの導入ガイドラインの策定等
  • 行政情報・生活情報の多言語・やさしい日本語化による情報提供・発信の推進
  • 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、外国人生活支援ポータルサイト、外国人技能実習機構等を通じた必要な留意事項の周知・徹底

地域における多文化共生の取組の促進・支援

  • 在留外国人に対する総合的な支援をコーディネートする人材の育成を促進する施策の検討
  • 国際経験の豊かな人材の積極的なリクルートに向けた地方公共団体とJICAとの連携

(2) 生活サービス環境の改善等

災害発生時の情報発信・支援等の充実

防災・気象情報に関する多言語辞書の民間事業者のアプリ等における活用の促進

交通安全対策、事件・事故、消費者トラブル、法律トラブル、人権問題等への対応の充実

警察に係る制度に関するウェブサイトの見直し、外国語による掲載情報の拡充

住宅確保のための環境整備・支援

部屋探しをする際に活用できる「外国人のための賃貸住宅入居の手引き」の作成

金融・通信サービスの利便性の向上

金融機関における外国人の口座開設円滑化のための環境整備(各金融機関における好事例の公表・横展開、外国人の在留期間の把握による口座の適切な管理等)

(3) 日本語教育の充実(円滑なコミュニケーションの実現)

  • 「生活者としての外国人」に対する日本語教育の充実(地域における日本語教育環境を強化するための総合的な体制整備、日本語教育の推進に関する法律に基づく地方公共団体の基本方針の作成の促進等)
  • 日本語教室未設置の地域における日本語教室開設に向けた支援の強化
  • 日本語教師の資質・能力を証明する新たな資格である公認日本語教師(仮称)制度の整備
  • 外国人材との効果的なコミュニケーションを行う上でのポイントやその学ぶ手法の調査等
  • 日本語教育を行う機関のうち、日本語教育の水準の維持向上を図る上で必要な適格性を有するものに関する制度の整備の検討、検討結果に基づいた必要な措置の実施

(4) 外国人の子供に係る対策

  • 幼児教育・保育の無償化、高校及び大学の修学支援制度についての積極広報の実施
  • 集住地域・散在地域それぞれにおける日本語指導等の在り方について実践的な研究の実施
  • 学習者用デジタル教科書の活用促進、幼児期の特性を踏まえた研修プログラムの開発等の調査研究の実施
  • 全ての都道府県での公立高等学校入試における特別定員枠の設置等を目指した取組、高等学校における日本語指導・教科指導等に関するカリキュラム等の構築
  • 外国人児童生徒の就学機会の適切な確保等(地方公共団体が講ずべき事項の指針の策定を通じ、学齢簿において外国人の子供の就学状況も一体的に管理・把握すること等の促進)

(5) 留学生の就職等の支援

  • 「外国人留学生の採用や入社後の活躍に向けたハンドブック」の周知・活用促進
  • 高度外国人材の就職後の活躍に関し、中堅・中小企業が取り組めるような教材及び支援機関向け指導カリキュラムの作成
  • 大学と労働局(ハローワーク)間の協力協定締結等を通じた連携の強化

(6) 適正な労働環境等の確保

  • 「やさしい日本語」による労働条件や支援策等に関する情報発信の強化
  • 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける外国人労働者のためのハローワークの相談体制の強化

(7) 社会保険への加入促進等

  • 医療機関等におけるマイナンバーカードを活用した本人確認と保険資格確認の実施
  • 公的年金制度における脱退一時金の支給上限年数の3年から5年への引き上げ

4 新たな在留管理体制の構築

(1) 在留資格手続の円滑化・迅速化

  • 在留資格手続のオンライン申請の更なる対象の拡大
  • 在留カードとマイナンバーカードの一体化の検討
  • 「特定技能」の在留資格に係る在留諸申請時の提出書類の簡素化
  • 在留資格認定証明書の電磁的記録による交付の実施の検討

(2) 在留管理基盤の強化

日本語能力試験(JLPT)等の証明書の偽変造対策の強化による適切な在留審査の実施

(3) 留学生の在籍管理の徹底

留学生の在籍管理が不適正な大学等に対する、留学生の受入れを認めない等の在留資格審査の厳格化や、留学生別科についての日本語教育機関と同様の基準作成等

(4) 技能実習制度の更なる適正化

  • 出入国在留管理庁と外国人技能実習機構の情報連携強化及び同機構業務システムの刷新
  • 高額な保証金や手数料等による失踪を防止するための実習生に対する積極的な広報活動の実施

(5) 不法滞在者等への対策強化

在留カードの偽造・改ざんを確認するための無料アプリケーションの配布

鈴木 篤

特定行政書士。合同会社法テック代表社員の鈴木です。実務のスペシャリストの行政書士を育てることが日本社会の発展に貢献するとの思いから行政書士カレッジを運営しています。

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