開業準備中・新人行政書士のための「行政書士法」-業務編

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開業準備中・新人行政書士のための「行政書士法」-業務編

これから行政書士登録を考えている方は行政書士法を学ぶことをおすすめします。

行政書士法を学ばずに行政書士業務を行うと、数百万円の罰金刑を受けたり、懲戒を受けたりする可能性があります。また、行政書士業務を把握しないと見積書も作ることができません。

この記事では、行政書士事務所開業準備中の方や新人行政書士に向け、行政書士法に規定されている業務について解説します。行政書士登録後も知っておかなくてはならないためぜひご覧ください。

行政書士法とは

行政書士法には、行政書士の制度が定められており行政書士の憲法と言われています。行政書士になるなら必ず知っておかなければならない法律です。もし、行政書士法を勉強しないで実務を行うと、罰則を受ける可能性があります。

本来であれば、行政書士法は行政書士登録前に学ぶのが理想です。もし、登録してしまったのであればなるべく早く学ぶようにしましょう。

行政書士法には、業務、登録、行政書士の義務、行政書士法人、罰則などが規程されています。また、行政書士法以外に「行政書士法施行規則」(総務省令)があります。施行規則とは、法律の具体的な運用などが記載されている省令です。こちらも確認する必要があります。

行政書士業務

行政書士法第1条の2と第1条の3には、行政書士が行うことができる業務が規定されています。行政書士業務とは何かを理解せず実務を行うと、気づかないうちに法違反を犯している可能性があります。そうなってしまうと、罰則が適用され、行政書士としての活動に支障をきたすことになります。

世の中には、特に資格がなくてもやっていい仕事がたくさんあります。ホームページ作成、会計記帳、一般事務等です。これらは行政書士が行っても問題ありませんが、行政書士業務ではないということは理解してください。

行政書士が行うことができる業務(法第1条の2、法第1条の3)

  1. 官公署に提出する書類の作成(独占業務)
  2. 権利義務に関する書類の作成(独占業務)
  3. 事実証明に関する書類の作成(独占業務)
  4. 官公署提出書類手続きの代理
  5. 聴聞又は弁明の機会手続きの代理
  6. 行政書士が作成した書類の行政庁に対する不服申立手続代理(特定行政書士のみ)
  7. 契約書類を代理人として作成
  8. 書類作成の相談

「1.官公署に提出する書類の作成」、「2.権利義務に関する書類の作成」、「3.事実証明に関する書類の作成」については、行政書士の独占業務となり、法定独占業務といいます。独占業務と言われる根拠は、業務の制限(法19条)と罰則(法21条)の条文が規定されているためです。弁護士法、司法書士法などの他士業法も同じように業務規程、業務の制限、罰則というような条文構成となっています。

第1条の2(業務)
行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない

第19条第1項(業務の制限)
行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第1条の2に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。

第21条(罰則)
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
2号 第19条第1項の規定に違反した者

1~3以外の、「4.官公署提出書類手続きの代理」、「5.聴聞又は弁明の機会手続きの代理」、「6.行政書士が作成した書類の行政庁に対する不服申立手続代理」、「7.契約書類を代理人として作成」、「8.書類作成の相談」については、法定非独占業務と呼ばれます。法定非独占業務とは、条文に書かれているが独占業務ではないという意味です。

前述の法第19条第1項(業務の制限)では、行政書士法第1条の2には制限をかけていますが、第1条の3には制限をかけていません。ここがポイントです。

第1条の3(業務)
行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
一 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続及び当該官公署に提出する書類に係る許認可等(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第三号に規定する許認可等及び当該書類の受理をいう。次号において同じ。)に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為(弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十二条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く。)について代理すること
二 前条の規定により行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。
三 前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
四 前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。
2 前項第二号に掲げる業務は、当該業務について日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる。

「6.行政書士が作成した書類の行政庁に対する不服申立手続代理」については「特定行政書士」に限り行うことができます(法1条の3第2項)。

特定行政書士については「特定行政書士とは?研修内容、費用、登録方法を紹介!」の記事をご覧ください。

他の法律において制限されている業務

行政書士法第1条の2において、ほかの法律において制限されている書類の作成は行うことができないとされています。

ほかの法律の代表例として他士業法があります。他士業者の独占業務を把握しなければ、行政書士業務はわからないということになります。

他士業者の独占業務については以下のようになります。提出先の役所を目安にすると、どの資格者の独占業務かがわかりやすいです。

資格者 独占業務 役所
弁護士 訴訟事件・非訟事件に関する書類 裁判所、検察庁など
司法書士 登記申請書、供託書 裁判所、法務局、供託所など
社会保険労務士 労働・社会保険の申請書類 厚生労働省、労働局、労働基準監督署、ハローワーク、年金事務所、協会けんぽなど
税理士 税務申告書類 税務署、都道府県税事務所、市区町村役場市税課など
土地家屋調査士 不動産表示登記申請書 法務局
弁理士 特許出願書、商標登録出願書など 特許庁
公認会計士 財務書類(監査及び証明)

まとめ

行政書士業務は、官公署提出書類、権利義務・事実証明関係書類の作成が独占業務となります。他にも、官公署提出書類手続きの代理、聴聞又は弁明の機会手続きの代理、契約書類を代理人として作成、書類作成の相談も行うことができます。特定行政書士については、行政書士が作成した書類の行政庁に対する不服申立手続代理も行えます。

そして、他士業法などの他の法律で制限を受けている業務は行うことができません。

行政書士業務とほかの法律で制限されている業務、この2つを理解したうえで業務を行うようにしましょう。

鈴木 篤

特定行政書士。合同会社法テック代表社員の鈴木です。実務のスペシャリストの行政書士を育てることが日本社会の発展に貢献するとの思いから行政書士カレッジを運営しています。

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