行政書士試験合格後、開業までに「これだけはやっておきたい」7つのこと

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行政書士試験合格後、開業までに「これだけはやっておきたい」7つのこと

行政書士試験に見事合格された方の中には、行政書士試験に合格したことを武器にして、今お勤めの会社などで法律の知識などを大いに活かしていくという方や、次の資格取得のために、司法書士試験や社会保険労務士試験などの勉強を開始される方などがいらっしゃるかと思います。

もちろん、行政書士実務家として仕事をするべく、行政書士登録をする方も多いはずです。

今回の記事では、今後実務家として行政書士登録をする予定の方向けに、行政書士試験合格後から開業までにやっておきたい7つをお伝えします。

1.親族法・相続法(家族法)の基本書を読み込む

行政書士試験の受験勉強の際、民法の勉強にかなりの時間を費やした方は多いかと思います。

ただ、総則や物権・債権の勉強はたくさんしていても、親族・相続の分野はあまり勉強していないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本試験で親族・相続の分野がたくさん出題されることはないため、受験勉強の際はどうしても手薄になってしまいます。

ただ、行政書士として実務の現場に出ると、おそらく早い時期に一度は相続関連・遺言関連のご相談を受けることになるでしょう。
また、行政書士登録をすると、行政書士事務所の所在地がある地域を管轄する「支部」に所属することになりますが、支部が主催する市役所や区役所などでの無料相談会での相談内容の多くが(場合によっては相談件数の80~90%を占めることもあります)、相続や遺言・成年後見などに関するものとなります。

そのため、行政書士として相続業務や遺言業務などを取扱業務にしたいとお考えの方はもちろん、そうでない方も、行政書士試験合格後開業までの間に、今一度親族法や相続法などの法律を見直しておき、改めて基礎知識などの確認をしておくことをおすすめします。

その際、大学の先生などが執筆された「基本書」のようなものを、大きめの書店で並んでいるものでも構いませんので1冊ないしは数冊程度読み込むといいでしょう。
こうした基本書を読み込むことで、親族法と相続法の体系を理解し、実務の現場で不可欠な基礎知識などの土台作りをすることができます。

民法(親族法・相続法)基本書

行政書士カレッジ学長 菖蒲悠太先生愛読の親族法・相続法の基本書を紹介します。(ご購入の際は、最新版をご確認ください。)

①家族法 民法を学ぶ 第4版

家族法 民法を学ぶ 第4版 窪田充見著 有斐閣

家族法 民法を学ぶ 第4版
窪田充見 著・有斐閣

②リーガルクエスト 民法Ⅵ 親族・相続

リーガルクエスト民法Ⅵ 親族・相続 第5版 前田陽一・本山敦・浦野由紀子著 有斐閣

リーガルクエスト 民法Ⅵ 親族・相続 第5版
前田陽一・本山敦・浦野由紀子 著・有斐閣

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2.会社法の基本書を読み込む

行政書士試験の受験勉強の際に、民法の親族・相続分野と同様、商法・会社法の分野もあまり勉強していないという方も少なくはないでしょう。
本試験で商法・会社法の分野は5題しか出題されませんので、こちらも受験勉強の際はどうしても手薄になってしまいますよね。

ただ、行政書士として実務の現場に出ると、おそらくそう遠くはない時期に一度は会社設立関連のご相談を受けることになるでしょう。
会社設立関連のご相談のほとんどが「株式会社」又は「合同会社」の設立に関するものですが、どちらも「会社法」の知識が必要不可欠です。
インターネット上には、会社設立の際に作成しなければならない定款の雛形やフォーマットなどがたくさん出回っていますが、専門家である行政書士がこれらのツールを安易に使うことは避けるべきです。

それは、お客様によって定款に盛り込むべき各項目が異なるだけではなく、ただ単に雛形を穴埋めしていくことで定款を作成してしまうと、各項目で会社法上の矛盾が生じてしまうことも多々あるからです。
プロの専門家である以上、きちんと会社法の知識を身につけた上で、「プロが作成する確かな定款」を作成できるようにしたいところです。

また、行政書士として会社設立業務を取り扱わない場合でも、例えば許認可業務では、株式会社や合同会社などがお客様となることも多いかと思います。
会社法では、設立に関する事項のみならず、株主総会や取締役の任期、取締役会、議事録などの会社運営に関する事項もたくさん規定されています。
法人のお客様相手に、こうした会社法の知識が全くないのはいかがなものかと思いますし、こうした知識を身につけておくことで、必要に応じて税理士や司法書士の先生方におつなぎすることもスムーズにできるようになるはずです。

そこで、親族法・相続法と同じように、会社法についても大学の先生などが執筆された「基本書」のようなものを、大きめの書店で並んでいるものでも構いませんので1冊ないしは数冊程度読み込むといいでしょう。
こうした基本書を読み込むことで、実務の現場で必要不可欠な会社法の基礎知識などの土台作りをして、インターネット上の雛形をちょっとアレンジしただけではできない「プロが作成する確かな定款」を作成できるようにしてください。

会社法基本書紹介

行政書士カレッジ学長 菖蒲悠太先生愛読の会社法の基本書を紹介します。(ご購入の際は、最新版をご確認ください。)

①会社法

会社法第3版 田中亘著 東京大学出版会

会社法 第3版
田中亘 著・東京大学出版会

②有斐閣ストゥディア 会社法

有斐閣ストゥディア 会社法第2版 中東正文・白井正和・北川徹・福島洋尚著 有斐閣

有斐閣ストゥディア 会社法 第2版
中東正文・白井正和・北川徹・福島洋尚 著
有斐閣

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3.特定行政書士になるために行政法の復習

行政書士は行政不服審査の代理ができるようになりました。ただし、この代理手続は特定行政書士にならないとできません。

特定行政書士になるには、行政書士登録後、行政書士会が開催する特定行政書士法定研修を修了する必要があり、その後に実施される考査試験に合格しなければなりません。
考査試験の合格率は6~7割と言われています。考査試験の受験生全員が行政書士登録者であり、その中での合格率ですので、決して油断はできないと思います。

考査試験は行政法が中心となるので、行政書士試験で学んだ行政法をもう一度復習することをおすすめします。基本書ではなく、行政書士試験で学んだテキストなどで十分です。
テキストは、特定行政書士法定研修の受講を申し込めば、研修のテキストとして渡されます。そのため、あえて別途購入しなくても構いません。

実際に特定行政書士になった先生にお聞きしたところ、行政書士試験で出題される行政法の方が難しかったとおっしゃっていましたので、行政書士試験の勉強で求められるレベル以上の深い行政法の事前学習は不要だと思います。もし、深い内容が出題されるとすれば、法定研修の中で説明がされるはずです。

特定行政書士法定研修は、行政書士1年目に受講することをおすすめします。理由は、行政書士の仕事が軌道に乗った後は、特定行政書士法定研修を受講する時間の確保が難しくなるからです。
それと、行政書士試験合格後は行政法の知識がまだまだ鮮明に残っているはずだからです。そのため、行政書士登録後は、特定行政書士の法定研修を受講することも視野に入れて、今後の計画をしましょう。

特定行政書士の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
特定行政書士とは?研修内容、費用、登録方法を紹介!

4.官公署の手引きを集めて目を通す

行政書士のメイン業務といえば「許認可業務」です。行政書士の「王道」業務とも言えます。
許認可業務については、もちろん各業務の根拠法(例えば建設業務であれば建設業法、宅建業務であれば宅建業法など)をきちんと理解し、法律に基づいて業務を進めていくことが重要です。
ただ、許認可の申請先となる各官公署では、行政書士ではない一般の方にも分かりやすく説明するための手引きなどがあることが多いです。
申請先の窓口で無料で冊子を配布しているところもありますし、ホームページから手引きのデータをダウンロードすることができるところもあります。

インターネットの検索エンジンに「許認可名+手引き」「都道府県名+許認可名+手引き」などのワードを入力して検索すれば、都道府県のホームページなどに掲載された手引きのページに行きつきます。行政書士試験合格後開業前に、今後取り扱うであろう許認可業務に関する手引きを集めて目を通しておくと、開業後には一定程度の基礎知識や申請手順などを把握した上で業務に臨むことができるでしょう。

まずは、ご自身の事務所がある地域の官公署(県庁や市役所・区役所など)で公開されている手引きに目を通してみて、来たるべき時に備えておくことも有益です。

もし、自身の都道府県に許認可の手引きがなかったり、分かりづらかったりする場合は、別の都道府県の手引きを参考にするのもおすすめです。基本要件、必要書類、申請方法を確認したら、自身の都道府県の申請方法と照らし合わせてみましょう。こうして、オリジナルの手引きを作成しておくことは大変有意義です。

5.本格的に行政書士実務の勉強を開始

行政書士試験の合格発表前は、どうしても行政書士実務の情報収集をしたり勉強したりすることだけに集中するのは難しく、もしものときに備えて行政書士試験の勉強を再開する方も少なからずいるのではないかと思います。

ただ、見事合格した後は、本格的に行政書士実務の勉強を開始することが大事です。
行政書士試験の勉強内容が全て役に立たないわけではなく、例えば民法の知識を市民法務(相続業務や遺言業務、契約書作成業務など)で活かすこともできますが、行政書士実務に直結する内容ばかりではありません。
行政書士実務については、改めて「実務の勉強」をしっかり行うことが必要です。

そこで、本格的に行政書士実務の勉強を開始するにあたっては、次のような方法をおすすめしたいと思います。
ご自身に合った方法で学習してみてください。

  1. 市販されている行政書士実務に関する書籍を購入し、読み込む
  2. 行政書士などが講師となって開催されている開業セミナーや実務セミナーなどに参加する
  3. 受験指導校の「実務講座」のような、合格者向けの講座を通年で受講する

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6.少しでも人脈を広げる

行政書士の業務は多岐に渡ります。
許認可業務だけでも数千種類・数万種類はあるのではないかと言われていますし、相続業務などの市民法務や会社設立業務などを取り扱うこともできます。

こうした行政書士業務の全てを一人でやろうとするのは、たとえどんなに業歴が長いベテランの行政書士でも難しいです。
自分の専門外の業務については、他の専門の行政書士を紹介するようにしている行政書士も多いです。

また、一人で案件に取りかかる場合でも、その業務を専門とする先輩行政書士の先生に相談したいときには、気軽にかつすぐに相談できる存在が身近にいるといいですよね。

そして、行政書士では携わることのできない登記申請業務については司法書士の先生におつなぎしたり、税務については税理士の先生に、労務については社会保険労務士の先生にそれぞれおつなぎしたりします。
争いのある案件については、弁護士の先生をご紹介することもあります。
行政書士は、お客様からのご相談について「ハブ」となり、総合受付の役割を担うことも多いです。その際、相談者をしかるべきところに迅速におつなぎすることで、ひいては行政書士自身の信頼にもつながるでしょう。

そこで、行政書士試験合格後開業前に、行政書士同士の人脈はもちろんですが、司法書士や税理士・社会保険労務士・弁護士のような他士業の先生方との人脈を少しでも広げておくことをおすすめします。

ただ、行政書士登録前は、なかなか士業と会う機会がありません。そのため、行政書士登録後に、行政書士会のイベントに参加して、支部の先生や単位会の先生と知り合っていくことが現実的です。行政書士の先生の中には、兼業の先生もいます。税理士、司法書士、社会保険労務士の先生もいらっしゃいますので、そういった先生とつながっておくこともいいと思います。それと、行政書士同士でも取扱分野が違う場合は、そういった先生方とつながっておくことで、仕事の紹介を受けたり、こちらから仕事を紹介したりすることができます。

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7.書式・フォーマット・雛形を準備

実はここが一番難しく、開業前にネックになることも多いのではないかと思いますが、行政書士事務所を開業すると、様々な情報や資料などを管理したり、業務の案件を一つひとつ整理したりすることになります。

これは当然と言えば当然のことですが、開業時は一人で事務所を切り盛りする方が多いはずですので、全ての準備を一人でやろうとするのはかなり大変です。
特に、電話などの相談段階でヒアリングをするための「相談票」のようなものはどうすればいいのかや、行政書士業務を受任した際にお客様と取り交わすことになる「行政書士業務委任契約書」はどうすればいいのか、各行政書士業務でお客様から受領する「委任状」はどんなものを用意すればいいのか、報酬に関する請求書・領収書などはどのようなものを使えばいいのか、といったことなどは、多くの方が開業前に悩むこともあるのではないかと思います。

行政書士業務委任契約書

そんなときのために、行政書士試験合格後から、こうした相談票や業務で使用する委任状、事務所で情報管理などのために使用するフォーマットなどをコツコツと準備しておくとよいでしょう。

本来であれば、行政書士として独立開業する前に、どこかの行政書士事務所に勤めて、実際に行政書士事務所で使用している書式に触れてみることが理想です。しかし、行政書士事務所の求人は少ないため、そういった実務の現場で使用されている書式はなかなか見ることができません。当然、こういった書式は、各行政書士事務所のノウハウですので、そう簡単には見せてもらったり教えてもらったりすることはできないはずです。私自身も、現在使用している書式に行きつくまで試行錯誤を繰り返し、やっとの思いで完成させました。

これらについては、例えば行政書士が講師を務めるセミナーなどに参加すると、特典としてデータをもらうことができたり、行政書士事務所の開業に関する書籍を購入するとダウンロードできたりすることもあります。
また、受験指導校などの実務講座のようなものを通年で受講すると、講師の先生によってはテキストの中に書式の雛形を掲載したり、何かおすすめのものを教えてくれたりすることもあります。

もちろん、インターネットで「行政書士事務所 開業 書式 雛形」などで検索してみると、こうした書式のフォーマットを提供している何らかのサイトがヒットするかと思いますので、ご自身で使えそうだと思ったものを購入することもできます。

ただし、注意点として、一般的な会社で使用されている領収書などのデータでは、行政書士法で定められた項目を網羅していない可能性も十分ありますので、行政書士法に基づいた最低限の項目を盛り込む必要があります。

行政書士実務の勉強や人脈作り、営業などで時間を取られてしまい、こうした書式のフォーマットなどを自分で作成したり準備したりする時間がなかなか確保できないときには、こうした市販の書式データをまとめて購入することも決して悪くはないでしょう。
既存の行政書士事務所で実際に使用されている書式は見栄えもよく、相談者や依頼者などからの信用につながりやすくなります。

行政書士が取り扱う業務は多岐に渡り、建設業務、外国人の在留資格関連業務、相続業務、遺言業務など、取り扱う業務によって揃えておきたい書類には大なり小なり違いがあります。
例えば外国人が依頼者の場合は、各書式に翻訳文があった方が親切です。

また、依頼者が企業であれば、支払条件や支払方法などを依頼者の希望に合わせて、契約書などの書式をアレンジすることも必要になってきます。

そのため、基本的な事項がきちんと盛り込まれている書式を自分の手で「カスタマイズ」できることも大切です。
となると、購入する場合は、書式データが「Microsoft(マイクロソフト)」の「Word(ワード)」や「Excel(エクセル)」で作成されているものがおすすめです。
自分自身でカスタマイズができない書式は、将来的に法改正などがあった際に使えなくなったり使い勝手が悪くなったりすることがあるためおすすめできません。

開業前は行政書士実務に関する専門的な知識がなく、もちろん実務経験もないため、開業後いざという時に「あると便利」で、なおかつ「かゆいところに手が届く」書式集のデータをあらかじめ購入してみるのもいいのではないでしょうか。

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菖蒲 悠太

合同会社法テック代表社員、行政書士の菖蒲悠太です。大学卒業後、大手進学塾のチーフ講師や個別指導塾の教務主任などを経験し、「法テックメソッド」という学習法を開発しました。現在は、行政書士として活動しながら、法テックメソッドを用いた教育事業を展開しています。地元大田区では、外国人小学生に日本語を教えるボランティアもしています。また、東京都行政書士会では、法教育推進特別委員として小学生に対する法教育活動を行っています。

慶應義塾大学法学部卒業、東京都行政書士会 法教育推進特別委員会委員、東京都行政書士会大田支部 副支部長、伊藤塾行政書士実務講座講師(法人設立業務論/遺言・相続業務論担当)