新人行政書士が個人開業する場合、自宅事務所を検討する方がいます。
今回は、自宅兼事務所で開業する際のメリット・デメリットについて説明いたします。
自宅事務所のメリット
家賃を節約
自宅事務所を選ぶ一番のメリットは、事務所の家賃を節約できることです。
例えば、事務所の家賃が5万円だとすると年間60万円がかかります。開業当初はどれくらい仕事がくるかわからないため、毎月支払う家賃を抑えたいと考えるのは当然です。
私自身、自宅事務所を選択して開業しました。
開業当初は自宅事務所で開業し、仕事が受任できるようになってから自宅外に事務所を設けるというのも有りです。
いつでも仕事ができる
自宅事務所のため、すぐに仕事ができます。
行政書士は依頼者から書類を預かり、原本を確認しながら書類を作成することが多くあります。自宅事務所であれば、すぐに預り書類を確認でき、思い立った時に業務ができます。長期休みになった際でも郵便物を確認できます。
行政書士は、役所や客先などに出かけることが多いため、事務所を不在にすることが多いですが、家族がいれば郵便物等の受取りをしてくれます。
いつでも業務ができるため、家事や育児との両立もできます。
通勤時間の短縮
自宅事務所は、事務所への移動時間が発生しません。通勤時間分を勉強やプライベートに使うことができます。
個人事業主は時間を有効活用することが求められるので、時間が捻出されるメリットは大きいです。
事務所使用部分が経費になる
自宅事務所の場合、事務所で使用する部分の家賃や水道光熱費を経費にすることができます。多くの場合は、面積に応じて家賃や水道光熱費を案分します。
気を付けなくてはならないのは、所有物件で住宅ローン控除を利用している場合です。
住宅ローン控除は、住居として使用する場合に認められる制度です。そのため、自宅兼事務所となると、事務所部分については住宅ローン控除が適用されないことになります。
税務上の不安がある場合は、経費にする前に税務署や税理士さんに相談するか、経費計上しないようにしましょう。
自宅兼事務所のデメリット
自宅の住所がバレる
行政書士の事務所所在地は、日本行政書士会連合会のホームページで公表されます。
公表される項目は、以下となります。
- 登録番号
- 所属行政書士会
- 属性(個人開業、個人使用人、社員)
- 登録年月日
- 事務所の名称
- 事務所所在地
- 事務所電話番号
- 特定行政書士
- 主な取扱い業務(選択)
- URL(ホームページ、任意)
- メールアドレス(任意)
名刺や申請書にも行政書士事務所の住所を記載するため、依頼者、相談者、関係者に自宅住所が判明します。
賃貸であれば、何かあれば引っ越してしまえばいいと思いますが、所有物件の場合はそう簡単にいきません。
なお、Googleストリートビューを利用すれば建物もバレバレです。(便利ですがプライバシーの侵害が問題視されています。)
人を雇うことが難しい
自宅事務所の場合、自宅外事務所に比べると人を雇うことが難しいです。
自身が働くことを考えればわかると思います。トイレに行くと行政書士の家族にバッタリ会うというのでは気まずいですよね。
せめて、自宅玄関と事務所入口を別にするなど、自宅部分と事務所部分を完全に分離させると、働く方も安心します。
自宅兼店舗の例として街の美容室や飲食店があります。入り口が別になっていることが多いので参考になるでしょう。
なお、親族(兄弟や配偶者)や友人を働かせる場合は、お互い気にしなければ問題にならないかもしれません。
賃貸は使用承諾書が必要
賃貸の場合、所有者から事務所利用についての承諾をもらう必要があります。そして、事務所使用承諾書に押印してもらい行政書士会に提出しないと、行政書士事務所の登録ができません。
税金の面からも気を付けなくてはなりません。少し専門的な話ですが、住居用の賃貸物件は消費税が非課税となっています。
しかし、事務所用の賃貸物件は、消費税が課税されます。自宅兼事務所の場合、住居部分と事務所部分に分けて消費税を計算するのが原則となります。
このような税金の面も考慮され、事務所使用を認めてくれないことがあります。
なお、公営の賃貸物件については、原則、事務所使用できません。
事務所利用できるかは、賃貸契約書や規約に「事務所利用不可」と書かれているかで確認できます。ただし、事務所利用不可でもオーナーと交渉して事務所利用を認めてもらえることがあります。
一般的に行政書士事務所は信用があるため、事務所利用を認めてもらえることが多いでしょう。
休日も気を抜けない
戸建の自宅で事務所登録している行政書士さんから聞いた話です。
先生は休日にパジャマ姿で庭の植物に水やりをしていました。休日にはよくある光景だと思います。
そこに、相談者が急にいらしてパジャマ姿の先生へ「本日は事務所お休みでしたか?」と聞かれたそうです。先生はせっかく来てくれた相談者を無下に帰すわけにもいかなく、パジャマから仕事着に着替え相談に乗ったそうです。
パジャマ姿を見られたということで、相談中ずっと恥ずかしい思いをしたようです。
自宅事務所ではこのようなことが起こる可能性があります。
私自身、自宅事務所の時は、休日でも気を抜けないと思っていました。
マンションであれば、勝手に建物へ入ってこれないため、このようなことは起きにくいかもしれません。
戸建自宅事務所の場合は要注意です。
相談者・依頼者からのイメージ低下
自宅と別に事務所があったほうが一般的に信用される傾向があります。事務所家賃を支払えるくらい仕事があると思われるからでしょう。
すでに信頼関係ができているクライアントや関係者であれば、事務所の場所は特に気にされないと思います。行政書士個人の専門性や人柄等ですでに信頼関係があるからです。
なお、自宅の所在が一等地、大きな屋敷、高級マンション等であればイメージは上がるかもしれません。お金をもっていると仕事で成功しているイメージがあるため、比較的信用されます。
コロナ禍以降は、自宅でテレワークを行うことが珍しくなくなりました。そういった意味でも、今後は事務所の立地だけで信用を勝ち取るというのは、難しいと思います。
仕事とプライベートの区別がつきにくい
自宅は体を休める空間でもあり、仕事モードへのスイッチが入りにくいです。家族も一緒に住んでいます。
おススメは仕事のときは、スーツなどの仕事着に着替えることです。
髪の毛ボサボサ、パジャマ姿で仕事をしていると、急に来訪があった際、プライベートな姿を披露してしまいます。
「この行政書士さん仕事してるのかな?」と思われてしまいます。
せめて、近所のコンビニに行くときくらい服装で業務をしましょう。(コンビニだとパジャマでもいけちゃいそうですね。)