新人行政書士の営業の仕方!なぜ、お客様は、あなたに依頼するのか

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新人行政書士の営業の仕方!なぜ、お客様は、あなたに依頼するのか

行政書士として開業しても、全く仕事を獲得できず辞めてしまったという話も聞きます。最初の1件目を受注するのが、大変ですが、この1件との出会いが、とてつもなく大きな自信に繋がることは確かです。

この記事では、最初の1件を獲得する方法を私の経験をもとにお伝えし、また「営業」の意味を一緒に考えていきます。

はじめは苦しい時期もあると思いますが、諦めず、孤立しないことを胸に留め前進してください。

営業とは

行政書士として業務に励む。その業務を行うことで利益を受ける人、お客様を探すために行動を起こさなければなりません。自分の活動が、誰かの為になり、その対価が支払われ、自分の活動の糧になるという循環作用を「営業」というのだと思います。

先輩の先生に「どのような仕事を獲得なさいましたか?」と聞くと、「飛び込み営業」という回答もあります。開業当時は、とにかく街を歩き回って、目に留まった建設業者のインターホンを鳴らして、自分はこういうものだ、申請のサポートをさせてもらえないか、と。何百件も回ったという方もいます。

このような営業のイメージは、現代でも通用するときは通用します。ただ、全く業務経験もないままに、飛び込み営業を行うのは、相当の勇気が必要でしょう(私はやっていません!)。

もちろん「営業」には、心の持ち様の習得など対自分に働きかけるものもあります。確かに、マインドは大切です。ただ、せっかく書籍や実務講座などで知識を習得したとしても、やはり、それをアウトプットする場所が必要となります。

お客様はどこにいるのか

法人のお客様(B to B)の場合、ビジネスがある場所にお客様はいます。私たち行政書士は、自分単独で業務(純粋な行政書士業務)を作ることはできず、あくまでも、法人や個人事業主が行っているビジネスのサポートをすることで報酬を得ています。

例えば、建設業許可申請を業務としてやりたいなと思う場合、建設業を全然やっていない(受注できていない)会社からは、その業務を獲得することは難しいでしょう。一方、多くの受発注が飛び交っている会社であれば、行政書士がサポートするためのニーズが生まれることが多い、というのは想像に難くありません。

外国人関連業務(国際業務・入管業務・在留資格関連業務)を行いたいと思う場合、外国人を雇いたいと考えている会社は、やはり、一定のビジネスを行っており、そのビジネスを加速させるために、外国人を雇いたいと思うわけです。

個人のお客様(B to C)の場合、情報がある場所にお客様はいます。例えば、行政書士の仲間で開催する無料相談会だったり、コツコツと更新を続けてきたネット記事・ブログだったり、ポップな挿絵がある小冊子だったり。普通に生活をしていて、何か困ったことが生じると、どうすればそれを解決できるか、というマイナスからプラスへと転向させるために、私たち行政書士はサポートをするのです。

例えば、相続の場合、どのように手続きを進めていけばよいかわからない。どこかに知識を持っている人はいないか、というときに、行政書士等の専門家へのニーズが生まれます。

営業方法

すでに人脈があり、親しい相手からは、事情を汲んで仕事を発注してくれるというケースはままあります。例えば、身内で不幸があった場合など、相続関係の業務(遺産分割協議書作成など)に繋がることもあります。高校時代、仲の良かった友人が、今は社長かあ〜というような場合には、世間話をしながら仕事の話に繋がることも十分にあります。

しかし、業務未経験の場合、前述したように、飛び込み営業は難しいでしょう。人脈がなければ尚更です。では、どうすれば、仕事を獲得することができるのでしょうか?それは、「人との関係がないと仕事は生まれない」という鉄則に還ることが、解決策だと思います。

つまり、人脈がなければ作る、これだけです。

人との関係を構築するためにも、自己紹介は考えておきましょう。自分は何者か(資格、経歴、出身など)、どのようなことができるのか(相手が得るメリット)を中心に考えます。相手に合わせた自己紹介ができるように工夫します。会社相手であれば、その会社の事業内容に合うような提案が必要です。例えば、許認可業務や業界の経験があるなどです。名刺交換の際は、必ず自己紹介をしますので、事前に準備をしましょう。

相続サポートのダイレクトメール(チラシ)を自転車に積んで約500件の住まいに投函したことがありますが、2、3件の問い合わせがありました。そのうち、1件、実際に対面して相談をしましたが、受任はできませんでしたが、相談実績を0から1にすることができました。その1件の相談が、2件目には、大きく影響します。実績がないうちは、0から1にするのが何より重要です。

WEBサイトを作ったこともありました。実際に、WEB検索をして問い合わせ、そして相談に繋がるケースも数件ありました。ただ、WEBサイトでの集客は、価格競争に巻き込まれる可能性もあるため、相当戦略を立てないと受任は難しいです。

同じ時期に登録した行政書士とタッグを組んで、営業力を倍にするのも手です。セミナーを開く、あるいは共同事務所として開業することも考えられます。私は、いろいろなところに顔を出していたからか、運よく特許事務所の弁理士の先生と一緒に合同事務所に在籍することができました。ただ、それも開業して1年後です。その1年は、アルバイトをしながら、上記のような「営業」活動をしていました。やはり、色々なところに顔を出し、人脈形成をするというのは、大切だと思います。

商工会議所などの人脈の渦に飛び込むのも手です。46歳未満であれば、商工会議所青年部に入ることができます(さいたま商工会議所青年部の場合)。メンバーは経営者が中心です。集まって何をするかというと、地域振興のための行事運営等です。もっとも、すぐに仕事につながることはありません。頻繁に開催される会議に出席して、企画運営にコミットすることがスタートです。その頑張りを見て、「あ、この行政書士さんだったら、仕事もしっかりやってくれそうだな」と頼んでくれるわけです。経営者と話ができることは、経営者の顧客対応の訓練になります。また、各業界の情報も入手することができますし、業者をつなげることもできるようになります。人脈がある(顔が広い)ということは、お客様からすれば心強く、結果として信頼されるようになります。

執筆時現在、私は、行政書士法人の社員(役員)に就任していますが、代表社員とも、商工会議所青年部で知り合いました。商工会議所にて人脈形成をするには、ただ会員となるだけではなく、実際にイベント企画等に参加する必要があるため、相当な時間を割くことが必要です。業務が忙しくない開業当初に参加するのがおすすめです。

自分と関係のあるNPOや一般社団法人等の活動に参画するのも、おすすめです。あまり規模が大きくなく、代表レベルと直接話せる機会があると尚良いです。私は、LGBTQ+(レズ・ゲイ・バイ・トランスジェンダー・クィア・そのほか自分のために積極的に性的マイノリティのラベリングをする人たち)関係の法人のサポートをしていますが、自分自身が、アセクシャル(他者に対して性的な欲求を持たない人、その周辺)というセクシャルマイノリティ(性的少数者)だから個人的に参加をしていただけです。活動をしていくにつれ、何か行政書士として力になれることはないかなと思い、提案したところ、行政書士業務に繋がりました。例えば、同性パートナーのための相続サポートや、新規の一般社団法人の設立サポート・内部規則作成です。議事録作成だけでなく総会の運営全般に携わっている法人もあります。

私は、行政書士業務未経験だったので、開業当初は受任することが怖くも感じました。失敗したらどうしようという気持ちでした。ただ、そのとき相談業務を頑張れたのは、当時所属していた埼玉県行政書士会岩槻支部のセミナーや懇親会にとことん参加し行政書士の諸先輩と交流があったため、諸先輩から「教えるよ」、というお言葉をいただいたことが支えになったからだったと思い返します。実際に、受任したときには、これまでのセミナー資料を復習し「申請の手引き」をみたり、(申し訳ないと思いながらも)申請窓口の担当者に聞いて、可能なところまで自分で作成をしました。「ここまでやってみたのですが、ここだけ、わからないのです」というスタンスで聞けば、諸先輩も優しく対応してくださいます。

既存のお客様に対しては、定期的にアプローチをしましょう。年に1回でも構いません。「あれから、お変わりありませんか?」と。近場であったり、出張の予定があるならば(コロナ禍では難しいかもしれませんが)訪問するのも効果は絶大だと思います。これは、心理学でいう単純接触効果(人は接触する頻度が高くなればなるほどその相手に対して好意を抱く)を狙っています。

更新許可申請を行う時期があるならば、余裕をもってメール、電話をします。お客様は、その手続き自体を知らない、ということもありますので、この連絡は決してお節介や迷惑ではありません。期限の管理をしっかり行うことが、新しい業務獲得に繋がります。更新時期には、他の行政書士事務所から案内が来ていることもあります。早めの連絡が肝要です。

制度が変わったり、新しい情報があれば、メールやSNSで配信するのも良いと思います。最新情報を発信していることは、その業務に精通しているというイメージをつくることができます。同業である行政書士からの紹介も期待できます。

まとめ

自分の活動が、誰かの為になり、その対価が支払われ、自分の活動の糧になるという循環作用を「営業」というのだとすると、その循環を停滞させてしまうわけにはいきません。停滞させないためには、コミュニティに身を置いたり、情報の渦を作るしかありません。

行政書士業務は多岐にわたりますし、行政書士の方も周りにたくさんいます。「なぜ、お客様は、あなたに頼むのか」という問いを常に胸に留めておけば、自ずと道は開けると信じています。

岡嶋俊哉

行政書士の岡嶋俊哉です。私は国際文化に興味があり、外国人との交流を積極的に行っています。そのような縁から現在では在留資格(ビザ)申請や翻訳文書作成等の仕事をしています。前職では、国際特許事務所に勤務し、主に商標登録手続(英文書類作成含む。)に携わりました。また、某ラジオ局に勤務し、ゲストのアテンド等を経験。さいたま商工会議所青年部に所属し、各種イベントの運営委員等にも携わっています。

中央大学法学部卒業、埼玉県立浦和高等学校卒業、埼玉県行政書士会所属

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