特定行政書士とは
特定行政書士とは、日本行政書士会連合会が実施する特定行政書士法定研修の課程を修了した行政書士のことです。
特定行政書士になると、弁護士の独占業務である行政不服申立手続を行うことができるようになります。
行政不服申立手続ですが、例えば次のような手続があります。
- 外国人の難民不認定の結果に対し、異議申立を行う。
- 建設業許可申請が不許可処分となったが、判断を見直す余地があるため不服申立てを行う。
- 産業廃棄物処理施設設置許可申請で不許可となったが、周辺住民の同意書の提出を許可要件としていることに疑義があり、不服申立てを行う。
特定行政書士になるには
特定行政書士になるには、行政書士登録後に、特定行政書士法定研修を受講し、研修の最後に実施される考査試験に合格する必要がございます。
行政書士登録者でないと受講できないのでご注意ください。行政書士試験合格者で行政書士登録をしていない人は、特定行政書士法定研修を受講することができません。
特定行政書士法定研修の申込期間は、例年ですと4月下旬から6月中旬頃となります。毎年度、申込者数により申込期間の調整がされているようです。詳細は、日本行政書士会連合会のホームページにてご確認ください。
特定行政書士法定研修の受講料
受講料は、テキスト代込みで8万円となります。
ただし、再受講者については受講料が変わってきます。3年間は再受講可能となり、受講料の減免措置が取られています。4年目以降の方は、新規で8万円が必要となります。
令和3年度特定行政書士法定研修募集要項
特定行政書士法定研修
特定行政書士法定研修は、講義18時間、考査2時間の合計20時間が実施されます。
講義内容
講義は、日本行政書士会連合会中央研修所研修サイトにて、e-ラーニング研修形式で実施されます。自宅や事務所などで各自でビデオ講義を視聴します。
科目 | 時間(コマ数) |
行政法総論 | 1時間(1コマ) |
行政手続制度概説 | 1時間(1コマ) |
行政手続法の論点 | 2時間(2コマ) |
行政不服審査制度概説 | 2時間(2コマ) |
行政不服審査法の論点 | 2時間(2コマ) |
行政事件訴訟法の論点 | 2時間(2コマ) |
要件事実・事実認定論 | 4時間(4コマ) |
特定行政書士の倫理 | 2時間(2コマ) |
総まとめ | 2時間(2コマ) |
配本されるテキストは、「法定研修テキスト」、「行政書士のための行政法」、「行政書士のための要件事実の基礎」となります。
考査
考査は、試験形式により、10月の第3日曜日の14時~16時に全国で一斉に開催されます(年度によっては、試験日が変更される可能性がございます)。
マークシートによる30問択一式問題で行われ、合格点は6割程度とされています。
出題範囲は、法定講習の講師の講義口述内容、法定研修テキスト及びサブテキスト「行政書士のための行政法」「行政書士のための要件事実の基礎」からの出題となります。
過去問の入手
特定行政書士の考査の問題ですが、残念ながら公表されていません。しかし、試験問題の持ち帰りが認められていますので、考査を受けた先生に問題を見せてもらうことで確認できます。
また、中央研修所研修サイトに「特定行政書士プレ研修」というオンライン講座がございます。有料となりますが、そちらを視聴して対策をすることも可能です。
結果通知
考査の結果は、12月に事務所宛てに郵便にて届きます。
合否通知書に「合格」と記載されていれば合格です。合格者には、特定行政書士法定研修の修了証が同封されています。
また、特定行政書士の登録手続の案内も同封されていますので、案内に従い登録手続を進めることになります。
合格率
例年、特定行政書士の合格率は60%台となっています。意外にも、10人中3~4人は不合格になっているようです。
特定行政書士になると、日本行政書士会連合会のホームページの名簿に特定行政書士である旨が掲載されます。そのため、受講者や研修運営側に知り合いの先生がいると、合否が分かってしまうということもあります。
特定行政書士登録手続
結果通知書に同封されている案内で指定された日までに、以下の書類を揃え、各都道府県行政書士会の担当に提出します。
- 特定行政書士の付記に伴う行政書士証票記載事項変更手続書
- 写真 1枚(3cm×2.5cm)
新しい行政書士証票が作成されると、単位会から連絡がきます。行政書士証票を受け取る際は、現在持っている行政書士証票と引換えとなります。もしも行政書士証票を紛失している場合は、紛失届を提出することになります。
特定行政書士の確認方法
一番簡単な方法は、日本行政書士会連合会の会員名簿を閲覧することです。インターネットにつながる環境があれば、誰でも確認することができます。
検索欄に、「特定行政書士 修了者」というチェックボックスがあるので、そちらをチェックして検索すれば、特定行政書士のみの一覧が表示されます。
検索結果で会員の詳細を開くと、特定行政書士になった年月日も掲載されています。
他の方法としては、行政書士証票にて確認します。一般的な行政書士証票は銀色ですが、特定行政書士の行政書士証票は金色となり、証票に「また、〇年〇月〇日研修を修了した特定行政書士である。」と記載されています。
以上2点で確認することができます。
おわりに
特定行政書士制度を今後どのように活用していくのかについては、行政書士会も模索中であり、これからどうなるかが注目されている制度です。
現状は、行政書士の中でイメージアップにはなるかな、というくらいです。しかし、特定行政書士の人数自体まだまだ少なく、皆が行わないものだからこそ、そこに新たな業務があるはずです。
その「最初」を見つけた特定行政書士こそ、その業務の先駆者となり、新たな業務として確立していくことになるのでしょう。