行政書士事務所を開業したあと、必ず行うのが銀行口座の開設です。個人口座を使っても問題ありませんが、事業用の口座を極力用意するべきです。
そして、行政書士事務所名が入った銀行口座の開設もできます。
この記事では、行政書士事務所名の入った銀行口座について紹介します。
屋号付きの銀行口座について
行政書士事務所名が入った銀行口座であれば、顧客から事業用の口座と認識してもらえるので信用を得られるという効果があります。
取引先によっては、氏名だけの口座ではNGで、事務所名が入った口座を指定されることもあります。
事務所名を入れた場合、通常は「行政書士事務所名+氏名」という口座名義になります。銀行によっては行政書士事務所名のみで登録することもできます。
ちなみに、売上の入金専用の口座を事務所名入りの銀行口座にする。費用の支払の口座は、利便性の良い個人口座にする。という使い分けもおススメです。
ただし、銀行口座が複数になると、それだけ管理が煩雑になり、会計処理も面倒になるので、必要最小限の銀行口座を利用するようにしましょう。
それでは、銀行の種類ごとに主な銀行を紹介します。
ネットバンク
近年口座の開設数が伸びているネット系の銀行です。銀行の支店等の窓口はないですが、利用料が無料であったり、振込手数料が安かったりするのが特徴です。
また、コンビニATMで条件を満たせば現金の入出金が無料であり、もちろんインターネットでの振込が可能です。スマホだけで振込もできます。
メガバンク系や地方銀行もインターネットバンクのサービスがありますが、毎月の基本利用料が数千円程度かかかる銀行もあります。その点、ネットバンク系は基本利用料は無料なので、コスト的な面でもメリットがあります。口座の開設時に窓口に行く必要がなく、インターネットと郵便でできます。
ネットバンクはどれか一つ持っておくと便利です。
PayPay銀行
PayPay銀行は、屋号付き口座の開設が可能です。
PayPay銀行は「行政書士 〇〇 〇〇」のように、「行政書士+氏名」での登録も可能です。「行政書士+氏名」であれば、相続業務等の預り金の口座にも利用できそうですね。しかも、口座名義に行政書士事務所の名称が入っていませんので、行政書士事務所名を何度変更しても口座名義そのものには一切影響しません(オススメはしませんが・・・)。筆者も「行政書士+氏名」で口座を利用しています。
「行政書士+氏名」ですと、行政書士事務所名入りのものに比べるとやや信用度が劣るでしょうが、個人名のみの口座よりは信用度が高いはずです。
また、コンビニATMでも条件を満たせば、預入れと引出しを無料で利用できます。
楽天銀行
楽天銀行は、屋号付き口座の開設が可能です。
手続としては、個人口座を開設してから、個人ビジネス口座(屋号付き口座)を開設するという流れになります。楽天銀行は、楽天ショッピングのストアさんがよく利用しています。
後から事務所名(屋号)を変更する場合も、ネットで簡単に変更ができるので、事務所名を変える予定の人でも安心です。
ただし、楽天銀行はネットショッピングのイメージが強いため、行政書士事務所の固い印象が崩れる可能性があります。
住信SBIネット銀行
住信SBIネット銀行は、屋号付き口座の開設はできません。
特徴として、一定の条件をクリアすれば、月数回、他銀行への振込手数料が無料となります。
入金口座は屋号付き口座、支払いは住信SBIネット銀行という組み合わせもいいと思います。
ただし、2021年12月時点では、「登記ねっとかんたん証明書請求」というオンラインでの登記簿謄本等請求サイトの支払いに対応していません。行政書士は、謄本を請求することが多いため、この支払いだけは別の口座で対応する必要があります。ちなみに、PayPay銀行と楽天銀行は登記ねっとかんたん証明書請求の支払いに対応しています。
セブン銀行
セブン銀行は、屋号付き口座の開設はできません。
ATMがセブンイレブンに設置されているため、現金の入出金にとても便利です。なお、他のネットバンクもセブンATMで条件を満たせば無料で入出金ができます。他のネットバンクを持っている場合は、セブン銀行を持つメリットはあまりないかもしれません。
手数料は、預入れは24時間無料です。引出しは、午前7時から午後7時まで無料です。
現金の入出金が多い方はいいかもしれません。
こちらも、住信SBIネット銀行と同様、2021年12月時点で「登記ねっとかんたん証明書請求」に対応していません。
ゆうちょ銀行
ゆうちょ銀行は、屋号付き口座を開設することができます。
インターネットバンキングのサービス名は「ゆうちょダイレクト」といい、月間利用料は無料となります。
ゆうちょ銀行は、郵便局にATMがあり、利便性がいいです。PayPay銀行とも提携をしています。行政書士は郵便局に行く機会が多いので、ゆうちょ銀行とは相性がいいと思います。
また、自治会や任意団体等で会費を集めるのにゆうちょ銀行の屋号付き口座が作れます。この場合は、屋号のみで作ることができ、個人名は記載されません。
他に、筆者が窓口で聞いたのですが、個人事業の登記をしていれば、事務所名のみの口座開設も可能とのことでした。
メガバンク
メガバンクも屋号付き口座を開設することができます。メガバンクの銀行口座を利用するメリットは、顧客からの信用と窓口が全国にあることです。
インターネットバンキングのサービスもあります。銀行により、屋号付き口座の利用料が有料となります。
メガバンクの場合、他の種類の銀行よりも審査が厳しいと言われています。メガバンクはよく知られているため、各銀行の説明は不要かと思いますので、インターネットバンクの料金を紹介します。
基本的に窓口での開設手続となり、口座を開設する理由や口座利用の目的等を聞かれます。事前にそれらの理由を整理してから窓口へ行きましょう。
みずほ銀行
事務所の最寄りの店舗にて手続をします。
本人確認書類(運転免許証やパスポート等)と印鑑があれば開設できます。支店によって追加資料が必要な場合がありますので、窓口に行く前に支店へ連絡し、手続についての確認をしましょう。
インターネットバンキングサービスは「みずほビジネスWEB」といい、月間3,300円(消費税込み)の基本料金がかかります。
りそな銀行・埼玉りそな銀行
事務所の最寄りの店舗にて手続をします。
インターネットで案内が見当たらないので、手続については最寄りの支店へ直接連絡して確認する必要があります。
インターネットバンキングサービスは「りそなビジネスダイレクト(Mini)」といい、月間3,300円(消費税込み)の料金がかかります。
三菱UFJ銀行
事務所の最寄りの店舗にて手続をします。
必要な書類は次のとおりです。
- 本人確認書類
- 印鑑
- 事業の確認書類いずれか一点
- 国税または地方税の領収書または納税証明書(原本)
- 社会保険料の領収書(原本)
- 商号登記簿謄本(原本)
- 事務所の賃貸契約書(コピー可)
- 公共料金の領収書(原本)
- 税務署収受印付の確定申告書(原本)など
- 個人番号が確認できる書類(マイナンバーカード、通知カード、住民票など)
インターネットバンキングサービスは「BizSTATION Light」といい、利用時間や機能が制限されていますが、月間無料で利用できます。
三井住友銀行
事務所の最寄りの店舗にて手続をします。
必要な書類は次のとおりです。
- 本人確認書類
- 印鑑
- 個人事業の開業届出控え
インターネットバンキングサービスは「SMBCダイレクト」といい、月間無料で利用でいます。
地方銀行、信用金庫
各地方銀行や信用金庫の屋号付き口座の開設は、地方銀行・信用金庫により手続方法が異なります。
最寄りの地方銀行と信用金庫の店舗へ確認しましょう。
地方銀行や信用金庫を利用するメリットは、地元の人たちも利用している可能性が高いため、地元で個人を相手に営業をする人はいいかもしれません。
ほとんどの地方銀行・信用金庫はインターネットバンキングに対応しています。初期登録費用や基本利用料がかかるかどうかを必ず確認しましょう。
※この記事は2022年1月2日時点の情報となります。